第５６話 ページ16
第５６話
その後、２人で食事をしたり買い物をしたりした。ゆっくり歩きながらふと空を見上げると、さっきまで晴れていたのに少しだけ雲行きが怪しい。
もしかして雨が降るのかな。
そんな事を思っていると、案の定…ポツリポツリと空から水滴が落ちてきて次第に量が増えていく。街の人達も慌てて走る中、焦凍さんは私の腕をつかみ「とりあえずどっかで雨宿りしよう」と引っ張る。
近くの建物の屋根下に入り焦凍さんは濡れた髪を鬱陶しそうにかきあげた。
「A、大丈夫か？」
「大丈夫ですよ」
「少し落ち着いたらどっかで傘買わねぇと。いい時間だし、帰って直ぐ風呂だな」
せっかくの外出なのに雨が降ってしまったのは少し残念だけど、それでも今日は楽しかった。家族と出かけるなんていつぶりだろうか。
まだ個性が発現する前は、お父さんとお母さんと出かけてた…と思う。昔のこと過ぎて鮮明には思い出せないけど、あの頃は普通の家庭だったから。
それを壊したのは…私。
「……A」
名前を呼ばれハッとして焦凍さんの方を見ると、彼は真剣な顔で私の事を見ていた。
「また何か考え込んでたろ」
「え…？」
「浮かねぇ顔してた」
しまった、顔に出てたのか。心配かけてしまって申し訳なくなり「…すみません」と謝ると焦凍さんは少し眉間にシワを寄せた。
「いちいち謝らなくていい。家族なんだから、変な気なんて遣わず…何でも言ってくれ」
「焦凍さんは将来いいお父さんになりそうですね」
「結婚すればの話だな。あんまそういう願望もねぇし、考えた事もねぇけど…」
でも、と焦凍さんは続けながら私の顔を覗き込むように首を傾げた。
「今はお前がいるから、それでいい」
焦凍さんの濡れた髪から水滴がポタッと落ち、女性顔負けのキメ細かい肌にも水滴が滴る。
あんまり思った事はなかったけど、こういうのを水も滴るいい男って言うんだろうか。何ていうか…様になってる。
ボーッとしていると焦凍さんが「どうした？」と不思議そうな顔をした。
「あ、すみません……見惚れてました」
「っ………」
思った事をそのまま言うと焦凍さんが少し目を見開いて、私から顔をそらす。
「……お前、そういう事普通に言うんだな」
何で顔を逸らされたのか分からないけど
この時彼は、どんな顔をしていたんだろう。
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風鈴 - 誤字ってますが気にしないでください。「いままだ」になってますが正しくは「いままで」です！すいません。 (2021年11月27日 23時) (
レス) id: 19b3aa7f76 (このIDを非表示/違反報告)
風鈴 - めっちゃ好きです！イラストもとても好きです!!何時もつづきをわくわくしながら見させてもらってます。あと、他の作者様に失礼なのですが、いままだ見て来た小説でこの作品がいちばん好きです。勿論他の方の作品も大好きです！長文失礼しました。 (2021年11月27日 23時) (レス) id: 19b3aa7f76 (このIDを非表示/違反報告)
花 - シリアスの中にも"愛"が詰まってる感じで良き (2021年5月19日 20時) (レス) id: 5a0f0dfb22 (このIDを非表示/違反報告)
ひめたん - 好み過ぎる (2018年9月5日 23時) (レス) id: 6ef00c8f07 (このIDを非表示/違反報告)
ららら(プロフ) - 絵が、！！！すごい好みです！！！漫画書いてほしいくらいです、、笑頑張ってください！！ (2018年6月18日 17時) (レス) id: 67811c0872 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年6月3日 18時
