第６９話 ページ29
第６９話
季節はとうとう１２月に入った。
日が沈むと吐いた息が白くなり、ちゃんと着込んでいないと本格的に寒い。冷たい風にあたると肌がヒリヒリして、思わず首に巻いたマフラーに顔を埋める。
なんとなく学校帰りにコンビニに入ると暖かくて天国みたいだった。これは、また外に出るのが嫌になるな。
そんな事を思いながら店内を歩いていると、ふと雑誌コーナーで自分の足が止まる。
「………これ、この前のやつ」
そこにあったのはこの前焦凍さんがモデルをした雑誌だった。スーツを着た焦凍さんが表紙になっていて、相変わらずモデル顔負けのクオリティ。
そっと雑誌を手に取り中をパラパラと捲る。雑誌自体にはそこまで興味はなかったが、あるページでピタリと手が止まった。
「っ……」
そこに映っていたのは、自分。
あの日、女性スタッフに連れられて向かったのは更衣室だった。まるで着せ替え人形のように色んな服を着せられ、赤いドレスに落ち着くと『ヘアセットとメイクもさせて！』と言われたのだ。
鏡に映る自分はまるで別人みたいだったな。あんなに綺麗な格好をさせてもらい、自分も女である限り嫌な訳じゃない。でも…それ以上に恥ずかしくて。
他のスタッフさんに『おおっ可愛い可愛い！』『若いっていいね〜』と子供扱いで可愛がられる中、女性スタッフさんに『あの２人にも見せてきなよ！』と言われたが恥ずかしくて行けなかった。
そしてプロデューサーさんが『記念に一枚撮ってく？』なんて言い出して、もう私は流れるままに写真を撮り…まさか雑誌に乗るなんて。
「……………」
改めて雑誌に映る自分を見ると、本当にこれは自分なのかと疑ってしまう。何度見ても恥ずかしい。
一般人の私が載っかっちゃっていいものか。本物のモデルさんに比べたら、私がどれだけ着飾ろうと足元にも及ばない。
だから本当に記念として載せてくれたんだろう。スタッフさんは皆気さくでいい人達だった。
……まあ、いい思い出になった、かもしれない。凄く疲れたけど楽しくなかった訳じゃないし。
心の中で苦笑いを零し私は家に帰った。
いつもの様に無言で玄関を開けリビングに向かうと、そこには何故か焦凍さんがいる。
「…A、おかえり」
「え、あれ…焦凍さん？」
「今日仕事休みだって、言ってなかったか？」
「聞いて、ないですね…」
．
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風鈴 - 誤字ってますが気にしないでください。「いままだ」になってますが正しくは「いままで」です！すいません。 (2021年11月27日 23時) (
レス) id: 19b3aa7f76 (このIDを非表示/違反報告)
風鈴 - めっちゃ好きです！イラストもとても好きです!!何時もつづきをわくわくしながら見させてもらってます。あと、他の作者様に失礼なのですが、いままだ見て来た小説でこの作品がいちばん好きです。勿論他の方の作品も大好きです！長文失礼しました。 (2021年11月27日 23時) (レス) id: 19b3aa7f76 (このIDを非表示/違反報告)
花 - シリアスの中にも"愛"が詰まってる感じで良き (2021年5月19日 20時) (レス) id: 5a0f0dfb22 (このIDを非表示/違反報告)
ひめたん - 好み過ぎる (2018年9月5日 23時) (レス) id: 6ef00c8f07 (このIDを非表示/違反報告)
ららら(プロフ) - 絵が、！！！すごい好みです！！！漫画書いてほしいくらいです、、笑頑張ってください！！ (2018年6月18日 17時) (レス) id: 67811c0872 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年6月3日 18時
