第５４話 ページ14
第５４話
『あなたの元へ帰りたいと、思ったから』
そう言ったAは、あの後直ぐに気絶してしまった。恐らく緊張状態が続いたせいで、安心した途端に体の力が抜けたんだろう。
俺の元に帰りたい、という思いがAに生きる事を諦めさせなかった。胸がじんわりと熱くなり、気絶したAを横抱きにする腕に力を入れる。
ああ、なんか…すげぇ嬉しい。
けど悔しい。
Aのピンチを誰よりも早く察知していたのは俺なのに、助けてやる事が出来なかった。さっき警察から事の全てを説明され余計に悔しくなる。
「……爆豪、ありがとな」
「あ？たまたま通りかかっただけだろ」
爆豪には本当に感謝してる。爆豪がいなけりゃAとは二度と会えなくなる所だった。感謝してもしきれねぇ、けど…やっぱり俺が助けてやりたかったとも思ってしまう。
俺の腕の中で眠るAを見ていると、そんなやるせない気持ちになって苦しくなる。
「くそっ……情けねぇ」
もっと上手く守れるようにならねぇと。
いつからだ、いつから。俺はAを助けたいと思ってあの日こいつに手を差し伸べた。なのに、いつの間にか『助けたい』という気持ちが『守りたい』という気持ちになっている。
それくらい、俺の中でAという存在が大切な家族になってるって事なのか。それくらい、他の奴より特別な感情になってるって事なのか。
「ケッ、てめぇもすっかりクソ親父面かよ」
「全国の親って大変なんだな、毎日ヒヤヒヤだ」
「そりゃコイツの個性のせいもあるだろ」
Aの個性は、A自身も危ない目に合わせる。
でも今回はAの個性のせいだけって訳じゃねぇ。あの藤堂とかいう男、最初に犯行をおかしたのはAと出会う少し前だった。
身近にいた赤い目の女子高生って事で標的になったんだろうけど、それはAの個性ありきの話なのか。そこん所は謎のままだ。
なんにせよサイコパスという個性、厄介だな。今は大丈夫でもこれから先も大丈夫とは言いきれねぇし、またいつ変な事に巻き込まれるか分かんねぇ。
「いっそ護身術でも教えるべきか…」
「おい、半分野郎」
「…？」
「そのガキからあんま目ぇ離すなよ」
珍しく真剣な顔をしている爆豪に、少し違和感を感じながらも「…ああ」と頷く。
Aが危険な目にあわねぇようにって意味だと思ったから。けど、そういう意味じゃなかったんだと分かるのは…また少し先のことだった。
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風鈴 - 誤字ってますが気にしないでください。「いままだ」になってますが正しくは「いままで」です！すいません。 (2021年11月27日 23時) (
レス) id: 19b3aa7f76 (このIDを非表示/違反報告)
風鈴 - めっちゃ好きです！イラストもとても好きです!!何時もつづきをわくわくしながら見させてもらってます。あと、他の作者様に失礼なのですが、いままだ見て来た小説でこの作品がいちばん好きです。勿論他の方の作品も大好きです！長文失礼しました。 (2021年11月27日 23時) (レス) id: 19b3aa7f76 (このIDを非表示/違反報告)
花 - シリアスの中にも"愛"が詰まってる感じで良き (2021年5月19日 20時) (レス) id: 5a0f0dfb22 (このIDを非表示/違反報告)
ひめたん - 好み過ぎる (2018年9月5日 23時) (レス) id: 6ef00c8f07 (このIDを非表示/違反報告)
ららら(プロフ) - 絵が、！！！すごい好みです！！！漫画書いてほしいくらいです、、笑頑張ってください！！ (2018年6月18日 17時) (レス) id: 67811c0872 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年6月3日 18時
