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はち ページ9

「俺さ、高校最初のIHで膝壊しちゃったんだよね」
「!…IHって、試合中ですか」
「そう。動けなくなっちゃって救急車にお世話になってさ、そのまま入院した」



壁際で座り込んでそう話すAの隣で、影山も同じように座り込む。
Aの視線の先はバレーボール。
先程の震えの原因はコートのようで、見たり触ったりする分にはなんら問題のないボールを優しい目で見つめていた。



「3ヶ月近く入院して、歩けるようになってやっと退院した。俺がバレーをしたのはそれっきり」
「もう出来ない…ってわけじゃないんですよね。シューズ持ってましたし」
「あぁ、うん。医者曰く、同じ怪我をしたら今度はどうなるか分からないけど入念にストレッチさえすれば部活に戻っても大丈夫だって」
「それがわかったのはいつですか」
「…2年の春。もう一年前かな」



月に2度の通院を続け、怪我をしてから1年がたった頃には運動の再開を許された。
走ることも問題ないと言われ、体育の授業に参加することももちろん許された。
しかし許されたというだけで、あまり勧められることではない、と受け取れるような言い方だった。

もちろん始めはすぐにでも部活に戻ろうと思っていた。
1年という空白を乗り越えてやろうと意気込んだ。
しかし、そんなAを引き止めたのはAの瞼に焼き付いた頂の景色とその直後に感じた激痛の記憶。
大好きなスパイクを打ちたいのに、できない。
ならサーブは、レシーブは、なんて考えたが、どうしてもバレーのことを考える度に焼き付いた景色が主張してくるのだ。



「バレーは好き。でもできないんじゃないかってずっと悩んでた」
「…」
「そんな状況の俺がわざわざ着替えたのは、実際の所俺がどこまでバレーに近寄れるのか知りたくなったからなんだ。最初は影山が練習するのを見るだけのつもりだったんだけどね
…ごめん、びっくりさせて」
「及川さんたちは知ってるんですか」
「え?」
「今の網張さんのこと、知ってるんですか」
「……知らないよ。話してないから」
「なんで話さないんですか」
「できないことは変わらないのに、こんなかっこ悪いとこ見せられないでしょ」



自嘲気味に笑うAに、影山は不満そうな顔をした。
かっこ悪いなんてどうでもいい、とでも言いたげな表情だ。
しかしボールを見つめ続けているAは、その表情に気づかない。



「網張さん」
「ん?」
「網張さんって、馬鹿なんすか」
「……へ?」

きゅう→←なな



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ゆき(プロフ) - 赤憑さん» うわー!ありがとうございます!直しときます!!! (2023年4月28日 17時) (レス) id: 1fa030afc2 (このIDを非表示/違反報告)
赤憑(プロフ) - 面白い作品ですね!ところで…あの...ろく影山sideの話のところの西谷の漢字が西ノ谷になってます💦 (2023年4月28日 13時) (レス) @page7 id: 805737b448 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 天野さん» ずっと!?ありがとうございます!!今度は最後まで書き切りたいと思ってるので気長にお付き合いくださいませ!!! (2023年3月29日 10時) (レス) @page26 id: 1fa030afc2 (このIDを非表示/違反報告)
天野(プロフ) - 更新ずっと待ってました!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ありがとうございます!!!!!!!!!!!!!! (2023年3月29日 8時) (レス) id: c3ca8d9a5e (このIDを非表示/違反報告)
八雲 - すっごい大好きです頑張って下さい!!!!!!!!!! (2021年8月22日 0時) (レス) id: 34dfb00aa4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆき | 作成日時:2021年5月21日 18時

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