にじゅうなな ページ28
白鳥沢の勝利に向けた最後の1球。
3枚ブロックを抜いて叩きつけられたその1球で、青葉城西のインターハイは終わりを告げた。
悔しさを滲ませた顔のまま会場を後にしていく青葉城西の面々を見送る観客席から、1人の青年が目を鋭く光らせながら立ち去っていく。
足早に廊下を進んでいくと、青年の後ろから大勢の足音が聞こえてくる。
その足音と会話から白鳥沢の選手達だと悟ったであろう青年がチラリと横目で後ろを確認しつつ道を譲ろうとしたその時、網張、とその青年の背中に投げかける声がはっきりと廊下に響いた。
「…」
ふ、と小さく息をついた後、青年は天井を見上げる。
振り返る様子はないものの、名を呼んだ人物は確信を持って歩み寄ってくる。
黙って立ち去ることは出来ないと悟ったのであろう青年…網張Aは、気合を入れるようにぎゅっと拳をにぎりしめる。
「覚えててくれたんだ、牛島」
背中を向けたままそう返したAを、その名を呼んだ当人である牛島はじっと見つめる。
真っ直ぐ射抜くような瞳のまま、牛島は少しだけ顎を上げた。
「お前ほどの優秀な選手を忘れる理由がない」
「褒めてくれるんだ?ありがと」
「…もうバレーは辞めたのか」
牛島のその問いに、Aはぴくりと肩を揺らす。
牛島も、Aの怪我の件は知っているのだろう。
少し遠慮がちにも聞こえる声に小さく笑みがこぼれた。
「そのつもり、だったんだけどね」
意味ありげな答え方をするAに、牛島は隠す様子もなく眉間に皺を寄せながら首を傾げた。
これまで黙って見守っていた白鳥沢の面々も、牛島の不満げな雰囲気にざわつき始める。
そんな雰囲気を知ってから知らずか、Aはようやく牛島へと振り向いて挑発するように笑って見せた。
「首洗って待ってろ。…とだけ、言っておこうかな」
「……肝に銘じておこう」
先程の今にも詰め寄りそうな雰囲気から一転、牛島もAに向けて微笑み返す。
その表情は楽しそうで、Aはその笑顔を見て更に楽しそうに笑ってからひらりと手を振って去っていった。
「絶対に負けない」
その言葉は、どちらから零れたのか。
どちらともから零れたのか。
その結果はどうなるのか。
答えは、互いにとって最後となる春高で示されるだろう。
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ゆき(プロフ) - 赤憑さん» うわー!ありがとうございます!直しときます!!! (2023年4月28日 17時) (レス) id: 1fa030afc2 (このIDを非表示/違反報告)
赤憑(プロフ) - 面白い作品ですね!ところで…あの...ろく影山sideの話のところの西谷の漢字が西ノ谷になってます💦 (2023年4月28日 13時) (レス) @page7 id: 805737b448 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 天野さん» ずっと!?ありがとうございます!!今度は最後まで書き切りたいと思ってるので気長にお付き合いくださいませ!!! (2023年3月29日 10時) (レス) @page26 id: 1fa030afc2 (このIDを非表示/違反報告)
天野(プロフ) - 更新ずっと待ってました!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ありがとうございます!!!!!!!!!!!!!! (2023年3月29日 8時) (レス) id: c3ca8d9a5e (このIDを非表示/違反報告)
八雲 - すっごい大好きです頑張って下さい!!!!!!!!!! (2021年8月22日 0時) (レス) id: 34dfb00aa4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆき | 作成日時:2021年5月21日 18時