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さんじゅうなな ページ38

「A」
「ん」



羽織っていたジャージを脱ぎながら、Aはしっかりと頷いた。
ただ及川に名前を呼ばれただけ。
だが、及川の言わんとすることはわかっていた。

たったそれだけのやり取りを経て再開された第2セット。
金田一へとサーブが回ってきたタイミングで、Aはコート脇へと足を進めた。



「ピンチサーバーか…先生、あいつの事は何か知ってるか」
「いえ…影山くんと同じ北川第一出身のスパイカーでつい最近復帰したらしいと澤村くんから聞いた程度です」



詳細不明のピンチサーバー。
どんなサーブをうってくるのかもわからない烏野は及川と向き合い言葉を交わしているAの一挙手一投足全てに集中する。



「網張さんのサーブは及川さんと同じです。コントロール、パワー、どちらも磨かれてました」



とにかくふっ飛ばされないこと。言えるのはそれだけです。
そうAを真っ直ぐ見つめながら話す影山は、深く息を吐いて腰を落とす。
こうして敵としてAのサーブを受けることは初めてで、興奮と緊張が影山を襲っていた。

ピッとサーブを促す笛が体育館に響く。
エンドラインからかなり離れた場所に立つAは、ボールを額に寄せると祈るように深呼吸をした。
息を吐ききるのと同時にゆっくりと姿を現した瞳からはかなりの集中が伺える。
それからAは高くボールを投げると、回転しながら落ちてくるボールに向かって高く飛び上がり腕を振りかぶった。

ドンッッと大きな音を立てて放たれたジャンプサーブは、真っ直ぐ影山へと向かっていく。
自分に飛んでくる確信があったのだろう、影山は1歩も動くことなく正面でAのサーブを受けた。
しかし、正面でとらえたにも関わらずボールはあさっての方向へと飛んでいってしまう。
そのボールを見送った烏養はあまりの衝撃にガタリとパイプ椅子を揺らしながら立ち上がり、隣にいた武田も圧倒されて固まってしまっていた。



「なっ…にがつい最近復帰しただって?!あんなサーブ一朝一夕で出来るもんじゃねぇぞ!」



とんでもねぇもんみせやがって…!とAを睨みつける烏養は、そのAの表情をみてぐっと顎をひいた。
周りの動揺や興奮、それらを全て受け入れた上で挑発するような笑み。
圧倒的な強者の余裕を見せつけるような笑みを前に、それ以上吐き出せる言葉はなかった。

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ゆき(プロフ) - 赤憑さん» うわー!ありがとうございます!直しときます!!! (2023年4月28日 17時) (レス) id: 1fa030afc2 (このIDを非表示/違反報告)
赤憑(プロフ) - 面白い作品ですね!ところで…あの...ろく影山sideの話のところの西谷の漢字が西ノ谷になってます💦 (2023年4月28日 13時) (レス) @page7 id: 805737b448 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 天野さん» ずっと!?ありがとうございます!!今度は最後まで書き切りたいと思ってるので気長にお付き合いくださいませ!!! (2023年3月29日 10時) (レス) @page26 id: 1fa030afc2 (このIDを非表示/違反報告)
天野(プロフ) - 更新ずっと待ってました!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ありがとうございます!!!!!!!!!!!!!! (2023年3月29日 8時) (レス) id: c3ca8d9a5e (このIDを非表示/違反報告)
八雲 - すっごい大好きです頑張って下さい!!!!!!!!!! (2021年8月22日 0時) (レス) id: 34dfb00aa4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆき | 作成日時:2021年5月21日 18時

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