lua e sol (崖っぷちホテル！) (ページ30)

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ホテルマンとしてあるまじき主張をする時貞に軽蔑の視線を送っていれば、ハルが江口をフォローする。すると宇海は手のひらを返したように笑顔になり、デザートを褒めた。

「これには驚きました！このデザートにはとてもワクワクしました！こんなにもコースの最後を幸せな気持ちで締めくくれたデザートは食べたことがありません！」
「うそ！やった！……これセンパイにも褒められたんです！やっぱり名前センパイの味覚って天才ですよね！！」
「名前さん、ですか？」

そうして視線は一斉に(#name2#に)向く。引き返そうにも、全員からの視線に縫い付けられて名前は一歩も動けない。

「やっぱり！このデザート、とってもワクワクしましたよね！」
「……は、い。」

ここで宇海に賛同するのは気が引けたが、ハルのデザートを否定することもしたくなかった。素直に頷けば、宇海も嬉しそうにニコニコと頷く。何故、彼女のことを馴れ馴れしくも名前で呼んでいるのかという疑問を持ったのは江口ぐらいだろう。
名前に近づいていく宇海を止める術は、今の江口は持っていなかった。

「そうですね、名前さんは。客室係としてとても優秀な方だと思います。」
「それはコイツが宇海様のことを早い段階でバリストンの副支配人だと知っていたから……！！」

宇海の褒め言葉に困惑する名前を、うしろから時貞が攻撃するも、何故か宇海がそれの盾になってくれるので、名前の困惑はさらに深まっていく。

「それなら猶更ですね！彼女は一度もバリストンホテルの名前を出しませんでしたし、媚びるような態度も取らなかった。私をほかのゲストと変わらないように接してくれた。笑顔が少ないのが玉に瑕ですが……。常に冷静な対応でゲストの希望に応えようとするのは、ホテルマンとして素敵な能力だと思いますよ。」

こうまで褒められれば時貞も二の句が継げないようで、もごもごと文句を飲み込んでいる。

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