lua e sol (崖っぷちホテル！) (ページ20)

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「ま、先に、お金を支払っていただかないと。」
「え？」
「えぇ……、宿泊料220,000円とコース料理が22,000円、コーヒーをポットで注文……2回でしたから4,800円。それに雑誌代、マイナーなものばっかりだからいちいち高いんですよ。ね、苗字さん。全部で13,000円。合計すると、」
「馬鹿馬鹿しい。」
「はあ？！」
「馬鹿馬鹿しいって言ってんの。」
「ばっ、？！だいたい苗字！お前があの客を断らなかったからこんなことになってるんだぞ？！」
「それは違います！断らなかったのは支配人である私の判断で！」
「合計259,800円。それくらいあの人なら払えるでしょ。」
「なんの根拠があって……！！！」

立ち上がってミーティングテーブルの方を向き、鼻で笑うように発言する名前は時貞の怒りを買って当然だが、彼女には何かしらの考えがあるらしい。どうして自分たちが呼ばれたのかと不服そうな枝川に、佐那がしどろもどろに答える中、名前は彼女らに背中を向ける。
彼女のデスクに宇海の領収書を見つけた丹沢が彼女を呼び止めた。

「259,800円に、プールの水換え代ですよ。ですから領収書は作り直しです、苗字さん。」

しかし名前は振り返らない。
下ろしていた髪を高い位置でひとまとめにしながら、ため息をはくように言うのだ。今の時期しか見せられない光景をお客様にご堪能いただくのが今日のこのホテルの仕事でしょう、と。
意味を図りかねる者たちは皆、名前の言葉に戸惑いを隠せない。

「掃除は私がやります。」
「、ちょっと名前！！！」

ロッカーから作業着を取り出す名前は本気の様で、佐那の呼びかけに振り返ることはなかった。

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