誘拐 (ページ12)

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そんなある日、Aが虐待を受けている決定的な出来事が起こった。

それは昼休みの時。

Aは体調不良として、昼休みから教室に来た。

良かった、今日も来てくれて……と思いながら、俺は担任にプリントを届けに行こうと教室を出た瞬間。

女子の甲高い叫び声が聞こえ、思わず後戻りをした。

クラスメイトがなにかを囲うようにいる。

俺はその間を割って入る。

「……Aっ！」

その場にAが倒れていた。

俺は担任のことを放って、Aを抱きかかえて保健室に走った。

Aは、ちゃんと食べているのかと疑うくらい、軽くて細かった。

保健室には、先生が不在だったため、代わりに俺が看病することにした。

Aをベッドに寝かせ、毛布を掛けてやろうとした時。

「……嘘だろ」

俺は、目に入ったものが信じられなくて絶句した。

捲れたスカートから伸びる太ももには、大きな不自然な青アザができていた。

Aが虐待されているかもしれない。

そのことが脳裏に浮かぶ。

「……ちょっと、ごめん」

Aに申し訳ないと思いながらも、ブラウスのボタンに手をかけた。

ボタンを2つ外すと、同じような青アザに紐かなにかで打たれたようなミミズ腫れもできていた。

それで、確信してしまった。

Aは、虐待されているのだと。