誘拐 (ページ11)

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放課後になれば、俺は教室から飛び出すと例の公園に来た。

Aがいるかもしれない、と少し期待しながらブランコに座ってAが来るのを待った。

でも、Aが来る気配はなく、時間が経つにつれ、俺は不安になった。

Aはまだ学校にいるのだろうか、それとも家に帰ってしまったのだろうか……。

日が落ちていくにつれ、冷えてくる。

外気に晒されている耳たぶは、痛くてたまらない。

だけと、まだ待てる、まだ待てる、と繰り返してAを待つ。

でも、やっぱり限界だ。

本当に今度こそは……あと10分だけ待ってみようと考えている時。

「ミンギュ……」

Aが目の前にいた。

今度は、寒くないように自分の赤いコートを着ていた。

「A」

「ここにいたんだね。探してたの」

「え……？」

Aは大きな紙袋を差し出した。

「この前、借りてたから」

「ああ……返さなくて、良かったのに」

「ありがとう」

Aは、俺に紙袋を押し付けるように返した。

俺があげると言っても、頑として受け取らないらしい。

しつこくしたくない俺は、それを受け取った。