絶賛、アプローチされ中。2【千切豹馬】

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糸師冴のPA外からのスーパーゴール、凪誠士郎の神トラップからのシュート、糸師凜の逆転ゴール。


2−1でブルーロックがリードし前半が終了。


私の胸は既にいっぱいだった。


味方からパスを受け取った豹馬は、自身のホームとも言える右サイドを全速力で駆けた。


その姿を、一体どれほど待ち侘びていたことか。


やっと千切豹馬が帰ってきた。


あの頃より伸びた赤い髪を宙で踊らせ、軽快にその両足を回転させて。


一瞬たりとも見逃すものかと歯を食いしばった。


｢Aちゃん！｣


ハーフタイムに入ってすぐ、豹馬のお姉さんに声をかけられた。


手招かれるがままに席を立って彼女の方へ行く。


｢豹馬に声掛けに行こ！｣


｢え？あ…！｣


お姉さんは私の返答を待たずに階段をかけ降りていった。


血の繋がりしか感じないな…


｢顔も性格もそっくりでしょう？あの子達｣


出遅れた私に優しい声色で話しかけてくれたのは彼のお母さん。


｢豹馬は、学校でどんな風に過ごしてた？｣


どこか悲しげに、でも優しそうな笑みでそう尋ねた。


…そうだ、誰よりも豹馬を心配してたのは豹馬の家族だ。


｢同じクラスだった1年生の頃しかわからないんですけど、怪我してからは人が変わったみたいに…｣


傍にいるだけで何もしてあげられなかった過去が蘇る。


｢…ごめんなさい。私、何もしてあげられなくて｣


｢Aちゃんが謝ることじゃないわ。こうしてあの子のわがままを聞いてこんなとこまで来てくれたんだもの、豹馬にも十分気持ちは伝わってるはずよ｣


フィールドに視線を向けるお母さんに釣られて首を捩る。


チームメイトと喜んでいる彼の笑顔に、ちゃんと伝わった？と心の中で聞いてみた。


もちろん答えは返ってこない。


またの機会にでも聞くことにしよう。

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