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「…!」
赤髪の彼は、対象的な青色のユニフォームに身を包んで現れた。
この感情はあの時に似てる。
東京へ行ってサッカーをもう一度すると言ってくれたあの時の感覚。
近況は聞いてたけど、いざ自分の目で見ると実感が湧く。
彼は今、一度は壊れたその足で世界一への通過点に立っている。
「…言った通りだったでしょ」
"千切豹馬"は死んでない。
私が信じ続け、豹馬が取り戻した"千切豹馬"がここにいる。
真剣な表情でウォーミングアップをする豹馬を目で追い続ける。
やっぱり、かっこいいなぁ。
「すみません、前通らせてください!」
声のした方に顔を向けると、赤髪の女性が2人。
「あっ、どうぞ」
どっかで見たことある顔だな。
2人は私から3つ空けて席に座った。
どこかで見たような端正な顔に綺麗な赤髪が特徴的な人達。
……いやいや、まさか…
「あ!あれ"豹馬"だよ、お母さん!」
そのまさかだった。
恐らく、いや十中八九、この人達は豹馬の家族だ。
だってあのお姉さん、豹馬にそっくりすぎる。
「まじかぁ…」
好きな人の家族とこの距離で試合観戦なんて、いろんな意味で私にとっても大事な試合になりそうだ。
はしゃぎすぎて品がないわねあの子、なんて思われない?
顔だけの小娘にうちの豹馬はあげられない、なんてことになりかねないのでは?
いや、落ち着け。
私は顔だけの女ではない、そうだろう?
混乱した脳を落ち着かせるため、ホルダーに収まったペットボトルに手を伸ばす。
「あっ」
手から滑り落ちたペットボトルは運悪く豹馬の家族の方へ転がっていく。
まずいまずいまずい。
「す、すみません。ご迷惑おかけして…」
「あはは、そんなに畏まらなくても。はい、どうぞ」
彼女は豹馬のお姉さんだろうか。
「ありがとうございます…」
地べたのペットボトルを拾い、微笑みながら渡してくれた。
本当に豹馬にそっくりだ。
「あなた、高校生?」
「そうですけど…」
「1人で見に来たの?」
このグイグイ感、とても豹馬を感じる。
「はい、学校の友達に誘って頂いて…」
「いいわね、もしかして彼氏とか?私達も弟が出るから見に来たの」
せっかく話しかけてもらったんだし、いいよね。
「豹馬…君ですよね?」
「豹馬のこと知ってるの!?」
「はわわっ」
興味津々というふうに顔を近づけてきたお姉さん。
ドキドキするのでやめてください。
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にいな(プロフ) - さくらさん» ありがとうございます!!何卒最後までお付き合い下さい〜!!♡♡ (4月12日 2時) (レス) id: f69c63ae39 (このIDを非表示/違反報告)
さくら - すごく面白かったです!頑張ってください!サイコー! (4月8日 20時) (レス) @page1 id: 2b4aba0b1a (このIDを非表示/違反報告)
にいな(プロフ) - 由衣さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます🥰これからも頑張れます👊🏻 (2023年4月11日 20時) (レス) id: f69c63ae39 (このIDを非表示/違反報告)
由衣 - この作品大好きであります…‼︎尊い…これからも更新楽しみにしています! (2023年4月10日 16時) (レス) id: ddafeb5c63 (このIDを非表示/違反報告)
にいな(プロフ) - うなぎポテトさん» お気遣いありがとうございます🙌🏻これからも頑張ります‼️ (2023年3月30日 20時) (レス) id: f69c63ae39 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にいな | 作成日時:2023年2月2日 18時