54 ページ13
.
オレンジ色の空を見上げながら黒猫と話をする。
「これね、私の好きな人が好きなんだって。進められて食べたらしっかりハマっちゃった」
「にゃ」
意味は理解していなだろうに返事だけは一丁前にしてくれる。
「猫って恋愛とかするの?」
「にゃー」
うるさいと言われた気がして、ごめんごめんと謝った。
心の中で勝手に翻訳をして会話を続行する。
「その人は世界一のストライカーになるんだ。あ、ストライカーってわかる?」
「にゃー」
"わかる、馬鹿にするな"
「私も世界一に連れていくって言ってくれたんだ。その約束って付き合ってなくても有効かな」
「にゃ」
"知らない、直接聞け"
「その人は去年の秋に怪我しちゃって。私も怪我したことあるからわかるんだけど、生きた心地がしなくなるんだよね」
左足に力が入らなくなる度、失った才能に気付かされる。
それは存在意義そのものを失ったと同義で、自分が自分じゃなくなったような気がしてしまった。
だから私は逃げた。
逃げることで奪われたんじゃなく、自ら選んだ道だと思い込ませようとした。
結局、後悔しちゃったんだけど。
「でもね、その人なら絶対に乗り越えられるって信じてるんだ」
本当は最後まで傍で支えたかったんだけどね、と黒猫に笑いかける。
「にゃあ」
優しく声色でひと鳴きすると、珍しく体を摺り寄せてきた。
「…撫でさせてくれるの?」
そっと手を伸ばして背を撫でると気持ちよさそうに喉を鳴らした。
柔らかい毛並みから黒猫の体温が伝わってくる。
「このまま卒業しちゃって、二度と話せないのかな」
黒猫の体温に、氷が溶かされるような気分になった。
「もっと早く伝えとけば変わってたかなぁ…」
ねぇ豹馬、まだ1回しか"好き"って言ってないんだよ。
豹馬はたくさん伝えてくれたのに、私は全然返せてないんだよ。
零れる涙には抵抗しなかった。
「まだ、豹馬のこと大好きなんだよ…」
「…にゃ」
背中に涙を落としてしまったせいか、それとも気まぐれか。
ブロック塀の方へ歩いていく黒猫を目で追っていると、黒いスニーカーが目に入った。
人、いたんだ。
黒猫との会話を聞かれてないことを願って、恐る恐る顔をあげる。
うちの学校の制服。
肩まで伸びた赤い髪。
「よ、久しぶり」
大好きな人がいた。
1717人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
にいな(プロフ) - さくらさん» ありがとうございます!!何卒最後までお付き合い下さい〜!!♡♡ (4月12日 2時) (レス) id: f69c63ae39 (このIDを非表示/違反報告)
さくら - すごく面白かったです!頑張ってください!サイコー! (4月8日 20時) (レス) @page1 id: 2b4aba0b1a (このIDを非表示/違反報告)
にいな(プロフ) - 由衣さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます🥰これからも頑張れます👊🏻 (2023年4月11日 20時) (レス) id: f69c63ae39 (このIDを非表示/違反報告)
由衣 - この作品大好きであります…‼︎尊い…これからも更新楽しみにしています! (2023年4月10日 16時) (レス) id: ddafeb5c63 (このIDを非表示/違反報告)
にいな(プロフ) - うなぎポテトさん» お気遣いありがとうございます🙌🏻これからも頑張ります‼️ (2023年3月30日 20時) (レス) id: f69c63ae39 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:にいな | 作成日時:2023年2月2日 18時