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あんなにも大好きだったAより、俺はサッカーを選んだ。
これ以上、Aに情けない姿を見せたくなかった。
「もう…俺に構うな」
これでAは俺を諦められる。
自分のことで精一杯な俺なんかより、Aを幸せにできる奴はきっといる。
もう、Aを解放してあげなきゃって。
そう思ってたのに、振ってるのは俺なのに。
なんで俺が泣きそうになってるんだよ。
「豹馬」
振り向いたAは、いつものように優しい笑顔だった。
俺の髪をすくう細い指。
頬に置かれた手のひらは冷たかった。
「覚えてた?私から告白するからって言って、まだできてなかったんだよ」
過去を懐かしむように、ゆっくりと言葉を紡ぐA。
Aに言われて思い出した。
打ち上げの日。
そんな大事なことも忘れてたとか、やっぱ最低じゃん俺。
「本当はね、豹馬が怪我したあの日に告白しようって決めてたの」
初めて試合を見に来てくれた日。
せっかく来てくれたのに、あんなことになってごめんな。
「生きててよかったって言ってくれて、嬉しかった」
クラスマッチの日。
Aの泣いてる姿を見て心が苦しかった。
「私はずっと、豹馬が世界一のストライカーになるって信じてる」
嘘も偽りもない、真っ直ぐで美しい瞳。
「豹馬を好きになれてよかった」
その言葉がずっと欲しかったはずなのに。
怪我さえなければ、俺もAも報われてたはずなのに。
俺が始めた"好き"だったのに。
頬からAの手が離れていく。
「最後にひとつだけ、わがまま言ってもいいかな」
最後、という言葉に一気に寂しくなった。
悲しいぐらい綺麗に笑うAが遠く感じた。
「また、豹馬の目に私が映るようになった時はさ、
いつでも待ってるから」
"付き合うのは、もうちょっとだけ待ってほしい"
"うん、わかってる"
"その時は、私が豹馬に告白するから"
"いつでも待ってる"
俺が、Aに言った言葉だった。
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にいな(プロフ) - さくらさん» ありがとうございます!!何卒最後までお付き合い下さい〜!!♡♡ (4月12日 2時) (レス) id: f69c63ae39 (このIDを非表示/違反報告)
さくら - すごく面白かったです!頑張ってください!サイコー! (4月8日 20時) (レス) @page1 id: 2b4aba0b1a (このIDを非表示/違反報告)
にいな(プロフ) - 由衣さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます🥰これからも頑張れます👊🏻 (2023年4月11日 20時) (レス) id: f69c63ae39 (このIDを非表示/違反報告)
由衣 - この作品大好きであります…‼︎尊い…これからも更新楽しみにしています! (2023年4月10日 16時) (レス) id: ddafeb5c63 (このIDを非表示/違反報告)
にいな(プロフ) - うなぎポテトさん» お気遣いありがとうございます🙌🏻これからも頑張ります‼️ (2023年3月30日 20時) (レス) id: f69c63ae39 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にいな | 作成日時:2023年2月2日 18時