御曹司、初恋の行方【御影玲王】

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"俺と向き合う気がないなら、この婚約は解消する"


了承されたら、Aさんを手に入れるチャンスは二度と来ない。


そのリスクを背負ってもいいと思うほど、彼女の心の内が知りたかった。


｢…だ｣


｢え？｣


俯いたAさんの表情はわからない。


｢…やだ｣


か細い声が俺の耳に届く。


なんでもない顔をして、それは困るかも、なんて言われるだけだと思っていた。


親に迷惑かけるからとか、もっともらしい理由を並べて。


｢A、さん？｣


彼女の肩が震えているのに気付いた。


もしかして、泣いてる？


そう思った直後、ぽつりと水滴が落ちて服にしみを作った。


｢…おねがいだから、嫌いにならないで…｣


ひとりにしないで。


静かに涙を流すAさんを抱き寄せた。


乱れた呼吸を落ち着かせようと背中をさする。


｢大丈夫だから、ゆっくり息して｣


すー、はー。


息を整えるAさんを抱き締めながら考える。


彼女が泣いてる姿を初めて見た。


この婚約に思い入れがあるわけではないはずだ。


ますますAさんが分からなくなる。


｢…ごめん、れお｣


潤んだ声で謝るAさん。


｢俺こそごめん、婚約破棄はカマかけただけ｣


罪悪感に比例するように抱き締める力を強めた。


｢俺達はさ、姉弟っていう上辺の関係に依存してんだよ。


俺はAさんの傍にいるために一線引いて、Aさんは俺の好意を見ないフリし続けて自分の立場守って。


姉弟って関係に囚われて、お互いの気持ちが噛み合ってないんだよ｣


Aさんのは憶測だけど、と付け足すと、彼女は合ってると言うように胸の中で頷いた。


｢遅くなったけど、Aさんについて知りたい。


俺はあの頃の、自由だったAさんが好きだ｣

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