御曹司、初恋の行方【御影玲王】

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部屋に入った時は、キスする気なんてなかった。


弟扱いにむかついて、いずれはすることだからとやり返しのつもりだった。


それだけで止まるつもりだった。


キスをされた後のAさんの顔が、想像してたのと違って。


どうせ元彼とやることやってるだろって思ってたのに。


あんな、今にも快楽で蕩けそうな顔されたら止められなかった。


｢手、邪魔｣


｢や、見ないで…｣


いつも強気で余裕のあるAさんからは想像もできない。


この世の誰も知らない、俺だけが知ってる姿。


｢んぁ…れ、お、ゆっくりっ…｣


｢は、むり。腰止まんないから｣


快感、罪悪感、優越感、色んな感情でぐちゃぐちゃだった。


Aさんは行為が終わるとすぐに眠ってしまった。


初めてなのに無理させすぎたかな。


まあ、俺も初めてなんだけど。


隣で気持ちよさそうに寝息を立てる彼女に、そっとキスを落とす。


俺は今日、初めてAさんに勝った。


だけど、これじゃない。


こんな勝ち方に、何の意味もない。


｢…れお｣


少し掠れた声で呼ばれる名前。


｢起こしちゃった？｣


｢何かしたの？｣


今にも閉じそうな目でこちらを見るAさんが愛おしくて、またキスをした。


閉じかけていた瞳が大きく開く。


この勝ち方に意味がないとわかっていても、Aさんの反応は癖になる。


｢体痛くないか？｣


｢…腰が、いたい｣


行為を思い出して恥ずかしくなったのか、Aさんは頭から毛布を被った。


俺しか知らない彼女の姿に、また欲が煽られる。


｢玲王｣


｢ん？なに？｣


｢私のこと好き？｣


｢好きだけど…急にどうしたんだよ｣


のそのそと動いて、毛布から顔を覗かせるAさん。


さっきまでの弱々しい彼女ではなく、いつもの隙のない目で見つめてくる。


何も言えないでいると、それだけ、とにっこり笑った。

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