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「結局演技だったってそいつに白状させて、Aが戻ってきやすくなるよう努力はしたんだけどな」
俺がもっと気にかけるべきだった、そう言った玲王は悲しげな顔をしていた。
「そんなことがあったのに、なんでAは玲王と同じ白宝に?」
「俺も聞いた時はびびったけど、あいつがそう決めたんなら次こそ守ってやるしかねぇだろ」
懐かしそうに昔を振り返る玲王を他所に、ふと気になったことがひとつ。
「……玲王は、Aのことが好きじゃないの?」
「あいつは妹みたいなもんだよ。大事な幼馴染で、兄妹だ」
あたかも当然のように答えた玲王に、俺はこっそり胸を撫で下ろした。
「A」
店から出てきたAに玲王が声をかける。
「ごめんね、変な空気にしちゃって」
赤くなった瞳はまだ揺れていた。
今にも泣き出しそうな笑顔に、痛いくらい胸が締め付けられる。
泣かないでほしい。
いや、それと同じか、それ以上に、
「__辛いなら笑わないでよ」
不意に出た言葉に、俺自身も驚いた。
「平気だよ、昔のことなんてもう気にしてないし…」
わざとらしく明るく振る舞うAを見ると、苦しい感情が襲いかかってくる。
「なんでかわかんないけど、Aの悲しむ顔は見たくない」
あれ、なんでこんなに必死になってるんだろ。
頭で考えるよりも先に言葉が溢れる。
「Aを泣かせる奴は俺がぶっ飛ばすからさ」
何言ってんだろ、俺。
「辛いなら俺が一緒に居る、俺が笑わせてあげる」
こんな恥ずいセリフ、いつもなら絶対言わないのに。
「……ま、なんでも1人で抱え込むなってことだ。結局拗らせて俺が苦労すんだからさ」
あ、そうか、これが俺の知りたかった感情の正体だ。
「…玲王は、素直じゃないけど」
「おい、いい感じにまとめようとしてやっただろ」
ねぇ玲王、わかったよ、この感情がなんなのか。
「これまでは玲王しか居なかったかもしれないけど今は俺も居る。Aはひとりじゃないよ」
人を好きになるって、こんな気持ちなんだね。
Aは静かに、瞳から大粒の涙を零した。
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うなぎポテト - あぁぁぁぁぁ!!やっっっばい尊すぎんかです(尊すぎて敬語が使えません!!)せいしろーがかっちょいい……。吐血案件だこれ🫠更新無理せず!!応援してまーす!! (2023年4月3日 13時) (レス) @page4 id: 9030b78ea3 (このIDを非表示/違反報告)
にいな(プロフ) - のあさん» 他作品も読んで頂きありがとうございます!私自身も皆様が読みやすい文章を意識しているのでとても嬉しいです🥲長文の感想、本当に励みになります!ありがとうございました‼️ (2023年3月13日 21時) (レス) id: f69c63ae39 (このIDを非表示/違反報告)
のあ(プロフ) - 初めての感想です!普段占ツクなどは使わないしどちらかと言うと夢小説もひとつの小説のように読んでいるのですが、にいなさんのお話とても読みやすくて読んでいたら他作品も読んでいた事に今気づいて“あ、ほんとにこの人の書く話面白いんだな”って感動してます! (2023年3月3日 11時) (レス) @page36 id: 69fedd5e4a (このIDを非表示/違反報告)
にいな(プロフ) - はにゃ?さん» いつも読んで頂いてありがとうございます!これからも頑張りますのでよろしくお願いします🙌🏻 (2023年1月22日 14時) (レス) id: f69c63ae39 (このIDを非表示/違反報告)
はにゃ? - とても読みやすいです。これからも応援してます。 (2023年1月22日 10時) (レス) @page35 id: ef6fdebb20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にいな | 作成日時:2023年1月9日 20時