審神者はじめました。【男主】 (ページ8)

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ふぉと　鶴丸国永side ページ8

審神者に連れてこられた先の部屋。
襖をあければ、そこには布を被っていない山姥切国広がいた。
とうとう目がやられたか？とこすってみるも、何も変わらず。
ということは彼が変わったということか？！驚いた！！

審神者は山姥切といくつか言葉を交わすと、そのまま部屋を出ていく。
その場に取り残されたのは、新たにここへきた俺達だけ。

「あの審神者…なんかおかしくない？」
「加州の旦那……大方、鶴丸の旦那がきて、てんしょん、とやらがおかしいだけじゃないか？」
「一理ある」
「そうか？……なんとなく違うような……」

疑問を感じていたのもつかの間。
スパーンと大きな音を立て開けられた戸と、その前に立つ審神者と、そして。

「……なんだ、ありゃあ……」

目の前に見えたのは、数えきれないほどの管とそこに伸びる機械、そして大きな白い幕。

……それがのちに当たり前の風景と化すとは思いもしなかった。

それから、かめら、というものを向けられ、審神者に指示され姿勢をとる。
これがなかなかに難しく、変に筋肉を使うものだからしんどい。
嬉々として向けられる表情は幼く、何ともそれがジジ心を掴むというか、とにかくやらなければという意欲が湧く。
いや、俺は何を考えているんだ……疲労か？
すると、清光が口を開く。

「ねぇ、主ーぃ」
『なんだ？』
「俺たちのこと撮って何が楽しいの？」

この場にいる誰もが思うことだろう。
パシャパシャと撮る彼は楽しそうだし、俺達も見目は悪くない方だと思うが。
すると、彼はおもむろに手元から一枚の写真を取り出し、皆に見せる。

『これ、俺の大好きな一枚なんだ』
「……本丸と、鶴丸の旦那、か？」
「なぜ好きなんだ？」
『……わからないからだな、多分。
俺はこの写真に込められている気持ちも、背景もわからない。
それが悔しいし、不思議だし、知りたいって思うんだよ』
「俺たちを撮るのもそういうこと？」

コクリ、と頷く彼。

『お前ら自身もお前らの気持ちも全部、知りたいし、残したい。
それが今ここでの目標なんだ』

微笑む彼の表情が少し憂いを帯びていたのは、どうしてなのだろうか。
彼はとても変わっていて、色々と驚かされるけれど、その驚きは決して悪くないから。

知りたい、見たい、と幼子のように並べ立てる彼は随分と図々しく、厚かましく……人懐っこい。
にもかかわらず口はあまり良くはないらしい。

なんとなく垣間見えた審神者の心が予想外に優しいもので、ふっと口元が緩んだ気がした。