審神者はじめました。【男主】 (ページ4)

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捨てたのはページ4

西暦2205年。
歴史の改変を目的とする、歴史改変主義者を名乗る軍勢が現れる。
政府は【審神者】なる特殊な力を持つ人物を送り出すことで過去を守ろうとする。
審神者は刀剣男子という付喪神たちと協力して、それらと戦うー…らしい。

正直。

『帰る』
「審神者というのは名誉あるお仕事でして……」
『それやりに来たわけじゃないし……ごめん』

目の前にいるキツネに謝る。
彼は小さな体をさらに小さくして目を伏せる。
苦笑しつつ、先ほどのことを思い出す。

変な機械に乗せられた後、目を開ければこの和室とこの狐…こんのすけが目の前にいて。
初めまして、とあいさつされた時には、思い切り自分の頭を柱にぶつけるくらいには動揺した。
彼が説明がある、と話し出した……ところで冒頭に戻る。

明らかにショボンとしたこんのすけを撫でまわしつつ。
ここからどうやれば帰れるのだろう、と辺りを見回すが装置らしきものは何もなくて。
彼に聞いたけど。

「審神者殿、私はここの本丸の担当なのです。」
『知ってるけど？』
「あなた様がお帰りになられれば、私は消滅するしかなくなる」
『……どういう、こと？』

彼の表情と言葉に嫌な汗が一筋伝う。

「私は審神者殿のサポートをする政府によって作られた機械。
全てオーダーメイドになっておりまして、審神者一人に対し、私も一人となっております。
あなた様がいなくなってしまわれれば、当然いらなくなった私は廃棄される……
以前は別に構わないと思っていたのですが、こうしてあなた様と言葉を交わしていると、やはり寂しさを覚えてしまって……」

すみません、と謝る彼に俺はどんな顔をすればいいのか。
俺だって聖人君子じゃない。
自分の夢だってあるし、やりたいことだってたくさんあるし、人生をそこにかけたい。
だけれど、非情になれるほど冷酷なわけでもない。

自分がいなければ消えるのだと、寂しいのだと。
じいちゃんと過ごした過去の自分が蘇る。
同じ言葉を俺もじいちゃんにかけて……俺は何度後悔したことか。

かけられる立場になってしまったことが皮肉に感じる。
でもきっとこれは必然だったのかもしれない。

夢か、情けか。

どちらを取るにしても胸中に想いが燻るのは知っている。
ならば。

『審神者に、なるよ』

瞬間顔を綻ばせたこんのすけの顔は今でも忘れないし、忘れられない。
後悔をしているかと聞かれれば、あまりない。
こうしてこの日から俺は審神者になった。
だが、同時に夢を捨てた日となった。