審神者はじめました。【男主】 (ページ20)

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かけがえのないページ20

ふわふわふわり。
気持ちいい何かに包まれて、ふよふよと辺りを漂って。
時折肌を撫でる空気の柔らかさに目を瞬かせ、ふっと笑う。
あぁ、このままでいたー……

『いッ……でぇえ！！』
「あだ？！な、なんだ？！」
『ふぉああ？！おま……あ。』

ガツ、と目の前にあった何かにぶつかる。
不意に感じた痛みに、急速に浮上する意識。
ば、と反射的に顔をあげると、隣ではまんばが目を丸くしていた。
なぜここに、と問おうとしたが次第に思い出していく。

そうだ、まんばに話したら泣いちゃって、そんでそのまま眠くなって……

と、そこまで考えたとき、重要な事に気づく。

『おおおおお前なんでここにいるんだよ！！！空気読めよ！！』
「アンタが俺と布を持ってるから……暫く外にいたのだが……心許なくて……」
『え、あぁぁ…悪かったな？！』

泣き顔をみられるとは……恥ずかしすぎて死ねる。
男なら通じるものだと思っていた、と八つ当たりしてしまったが、彼には彼の言い分があったようで。
うう、と頭を抱えつつ、ちら、とまんばを見る。

俺が寝てても、自分の物をさっさと取って行かなかったまんば。
単に面倒だったのかもしれないが。
それでも、感じるのは……彼の優しさだった。
実際、それに救われた。
はぁ、と息を１つつき、脱力しつつ。

『俺はまだ……納得は出来ない。
お前じゃない誰かに言われても、きっとそうだったと思うんだ。

でも、もしかしたらいつかは……お前みたいに思えるのかもな』

背負う物が、例え自分のものでないとしても。
何年間も背負っていれば、簡単には降ろせない。
苦しいから、と投げ出すことなんか絶対に。

だけど、いつかは。
そんな思いを込めて彼の顔を見上げると、途端、寄せられた眉根と吐かれるため息。

「強情だな。
写しの俺を目標に立てるな……
アンタはアンタだろ」
『お前もぶれねーな……
俺を知ってる山姥切国広は、お前だけだってーの』

目の前の彼だって、俺にとっては唯一無二なのだ。
初めて分かりあえた、俺だけの友人(かたな)。
偶然だったはずが、必然の出会いだったのではないかと運命を信じてしまいそうになる。

目を丸くする彼に微笑みつつ、本体に手を翳す。
ほう、と一瞬灯った明かりが柔らかく彼を包む。

『だから……
これからも隣で支えてほしい』

頼むよ、とウインクをして、少しおちゃらけてみる。
すると、コクン、と頷く彼。
その耳が赤く染まっていたのには気づかないことにしようと思った。