審神者はじめました。【男主】 (ページ16)

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手入れの時間ですよページ16

手入れを行うため、手入れ部屋へ。
簡単にこんのすけから説明を受けるが、刀剣男子の場合は一般の日本刀のような本格的な道具はいらないらしい。
なんでも審神者の霊力を注ぐだけで治る、らしい。
手入れ部屋でしか傷が治せないのは、部屋自体に複雑な術式が組み込んであるかららしい。

『へぇ、やっぱ特殊なんだな…じゃあ、こうしてこうで……お』
「どうやら治ったようだね」
『こりゃ楽でいいな、はい次じろさん』
「はーい」

刀を借り受け、スッと刀身を撫でるように手を翳す。
すると、パァ、とほのかに光が舞ったのが見え…どうやらこれが【手入れ】になるらしい。
流れ作業のようにこなせると思ったが、どうやらそう上手くは行かないらしい。
苦戦する俺に、そういえば、とじろさんは口を開く。

「主の【記憶力】すごかったよー！
それがあればアタシも酒の銘柄の見分けがすぐできるのになぁ」
『え、どういうこと』
「基本どれも似たような木箱に入ってるだろ？
いいの見つけても、中身にしか興味なくてすぐ忘れちゃうんだよなぁ…」
「それはアンタの努力次第でできると思うが」
「んーや、無理！」
「少しは頑張ろうね、次郎」

なるほど、そういう使い方もあるんだなぁ…
いいなぁ、と物欲しそうな目をしているじろさんに微笑むと。
脳裏をよぎるのはとある記憶。
じり、と胸が焦げたような痛みが走る。
それに思わず眉根を寄せる。

「大丈夫かい？」
『！あ、あぁ』
「少し休むといいよ。
私たちの怪我は怪我とも言えないようなものだが、霊力を使うことには変わりないのだからね」
『じゃあ、まんばだけとりあえず残ってもらって…二人は先に行っててくれ』

心配そうな声音が上から降ってきて、記憶はどこかに掻き消えた。
だが、乱れた心はなかなか元には戻らなくて。
少し休むことにして、大きな二人組を見送った。

しん、と静まる部屋の中には俺とまんばの二人だけ。
少しだけ落ち着いた気がするのは、彼の空気感がそうしているのだろうか。
なんにせよ今回ばかりは感謝しなければ。

『悪いな、まんば』
「別にいい……何かあったのか」
『いや……』
「そうか」

苦笑しつつ、彼を見ると一瞬だけ心配そうな顔をしていた。
探ってこないのはきっと彼の優しさ故。

それが、妙にストン、と心に納まって。
気づけば。

『……やっぱ、聞いてほしいことがある』

誰にも言うことはないと決めていたのに。
白い布を被る彼にはそう口にしてしまっていた。