審神者はじめました。【男主】 (ページ15)

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ご帰還ですページ15

一人、書類整理をすることになった俺はというと。
開始5分で眠気に襲われていた。

(昔から活字って駄目なんだよな……イラスト付きなら少しはマシなんだけど)

ふよふよと自分が浮いているような奇妙な心地よさに誘われつつ、視界はどんどん狭まっていく。
頭の片隅でもう、夢という名の映画が既に上映中だ。
そんな格闘を長らく続け、最早これまで……と力尽きそうになった時。

「主！」
『ぅわああああぃッ？！』

スッパーン、とそれはもういい勢いで目の前の襖が開いた。
というか、飛んだ。
それを目で追いつつ、飛び込んできた長谷部は何事もなかったかのように言葉を続ける。

「第一部隊、第二部隊ともに、特に傷を負うことなく帰還しました！」
『そう、お疲れ』
「我らが得てきたものは資源部屋にまとめておりますので！」
『資源よりも今は襖が欲しいんだが』

爽やかな笑顔の彼は一ミリも自身がその手で俺の襖を吹き飛ばしたことに気づいていない。
では、と今にも帰りそうな具合だった。
切実な思いを口にすると、彼はようやく気付いたようで、スミマセン力加減が…と溢す。
後で直してくれるらしいし、謝ってくれたし、良いとして。

『とりあえず、皆の所に行こう』
「主命とあらば！」

＊

長谷部の真似をして、とりあえず勢いよく襖を開ける。
小気味いい音はしたものの、彼のように吹き飛ばすことはできなくて。
なんとなく悔しい。

『とりあえず一列に並べ！！！』

＊

『なしなしなし……あ、やっぱりあった』
「次郎がどうかしたか？」
「アタシ何もしてないけど……」

列をなした刀剣をじっくりと爪先から頭まで眺める。
ようやく見つけたそれに俺は苦笑しつつ。
刀剣たちは訳の分からない様子だった。

『俺には一つ特技があって……ほれ』
「あ」
「切れてる」
『一回見た物は画像で覚えてるからこういうの見つけるの得意なんだわ』

いいことばっかじゃねーけど、とじろさんの微かな着物の傷を手に取る。
これってやっぱ縫うのかな、なんて考えていると。

「変わっているとは思っていましたが……」
「こんなの普通気づかねーよな」
「驚いた！」 etc…

口々に賞賛してくれる皆に、どや顔を浮かべつつ、着物の直し方を問う。
どうやら手入れで治るらしいことに安堵しつつ、俺は再度皆を見回して。

『大太刀二人とまんばは一緒に手入れ部屋、かな』

小さな傷だけだったが、見つけたからには直すべきだ。
俺は三人を引き連れ、その場を後にした。