審神者はじめました。【男主】 (ページ13)

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変化三日月宗近side ページ13

天下５剣が一振り、三日月宗近。
豪奢な細工と刀身の清廉さは刀の頂に立つほどに美しい。
そんな俺だったはずなのだが。

ー俺の越えるべき壁だなー

新たに仕えることになった主は、そういって不敵に笑った。
意味はわからなかったが、俺を前にしての感想がそれだったことに興味を持つ。

(今回の主は、どんな人の子か)

門をくぐり、敵をなぎ倒しつつ。
初期刀に選ばれたという山姥切国広に尋ねる。

「主はどうだ？山姥切」
「天下五剣ともあろう者が写しの俺に聞くのか…まぁいい。
まだ顕現したばかりで、知らないことの方が多いが、あの審神者は…まぁ、少し変だ」
「それはどういう…」

疑問が疑問を生み、尋ねると、彼は少し間を置いて話始めた。

「俺の瞳を綺麗だと言うんだ。
揺らぎがある分、違う、と。

…数々の本丸の主に仕えてきて、人というものを大分知ったが、そんなことを言うのはいなかった。」

これでいいか、とこちらを向く彼の表情は俺の頭にある彼と全然違う。
瞳は光を灯し、顔に覇気がある。
くるりと彼は身を翻すと、再度足を進める。
俺はそんな彼に目を丸くしつつ、やはり今回の主は変わっているのだと確信する。

「山姥切も随分と前向きになったと思わない？」
「これが元々だったのかもしれないよ？」
「でもアタシが知ってる山姥切はこんなんじゃないけど…
まぁ写し写し言ってるよりは、断然こっちの方がいい！面倒じゃない！」

大太刀の二人も同じことを思っていたようだ。

(だとすれば、俺たちもこんな風に変わるのだろうか)

山姥切がこうして前向きになれたように。
俺たちも、今までの自分から新たな自分に変えられていくのかもしれない。
それがいいか悪いかはわからないけれど。

(俺も変わりたい)

刀は物で、物は生がない。
成長も死も老いもなく…ただ、そこにある。

刀剣男子として人の体を得て、何年が経ったろう。
何度主の老いを見て、主の天命を見届け、朽ちただろう。
見渡せばいつも仲間たちが隣にいて、笑っていた。

ふと、目の前に大きな天幕が見え、そこからは大量の敵がこちらに陣を為してやって来るのが見える。
今まで通り、敵を切り捨て、血を吸い、勝つだけ。

変わらない役目、変わらないでほしい仲間。

…とは裏腹に、変わりたい自分。

果たして新たな本丸ではそれが果たせるのだろうか。

なんにせよ、楽しみなことこの上ない。

く、と１つ笑い、自身を抜き放つ。
そして、指示された陣を率いて塊の中へ駆け出すのだった。