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「黒田くんって強いよね」
「えー、ガチの殴り合いとかしたことないよ？」
「違う違う(笑)精神的にってこと」
「Aちゃんに一回泣きそうな顔見せてるのに？」
「だって、他の人…とか考える人いるもん。
諦めたりとか」
「あー…なるほどね」
「思ったことないの？そういうこと」
きっと愚問なんだろうけど。
携帯の画面を一瞥すると、寂しそうに笑って
黒田くんはゆっくり頷いた。
どうしようもない、と言いたげな表情に変えると
彼は再び口を開く。
「…思わない。リンさんしか欲しくないし、
考えたこともない」
恋って…みんなから聞いたり、
本で読んだりする恋って
いつもキラキラしていて、楽しそうで。
なんというか、もっとワクワクするような
ものだと思っていた。
でも、彼女に恋する黒田くんは、真逆。
寂しそうで、悲しそうで、苦しそうで。
それでも、やめられないって…やっぱり恋って、
その相手って特別なんだろう。
「俺が連絡待ってる間にも、
他の人と楽しそうにしてるのかなとか
考えるだけで頭おかしくなりそうだし、
相手が羨ましくて、苦しいよ」
「っ…」
「でも、だからこそ、連絡が来たら、
なにか反応があれば
俺のこと考えてくれてるのかなって思えて、
死ぬほど嬉しい」
泣きそうな顔をして、彼が口角を上げる。
それを見て、私も胸が苦しかった。
「恋って、そんなものなのかもね」
「…へ」
「恋してて、楽しいだけじゃないって今実感してる」
「う、ん…」
「軽く、病気みたいな(笑)」
完全に頭回ってないな、ごめん。
そう言って黒田くんは笑った。
恋ってさ、なんて何度も経験したことない癖に
まだ子供なくせに、まるで知り尽くしたように
私たちは語り合って。
自分たちの言葉で、自分たちの納得のいくように
言葉を探しては、紡いだ。
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作者名：むう
| 作成日時：2021年1月16日 20時
