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「でも、Aちゃんもじゃん」
「え？」
「指輪。それただのペアじゃないでしょ？」
「…っ、うん」
「なんで照れてんの〜」
「いや、着けて人前に出るの、初めてで…」
彼が見つけたのは私の薬指の婚約指輪。
まだ貰って一週間も経っていない新しいものだ。
毎朝眺めてしまうほど気に入っているけど、
やっぱり自分以外の人に見せるのは少しはずかしい。
落ち着かなくて指輪を触りながら俯けば、黒田くんはそれを見て笑った。
「でも、よかったねお互い」
「うん。でも、私の場合黒田くんのおかげでもあるから」
「えー、アイツのおかげでしょ？」
「まあそれもそうなんだけど(笑)」
お互い、自分なりの幸せを見つけられて、本当によかったなと思う。
私がありがとうって言うと黒田くんはいつもこんな風にはぐらかすけど、
私に恋を教えてくれたのは、間違いなく彼だ。
じゃなきゃきっと、今頃こんな幸せにはありつけてないはず。
「何回も言うけど俺ただしぶとく片思いしてただけだから」
「私も何回も言うけど、その片思いが、私の価値観を変えたの」
「大げさだよねぇ」
「黒田くんは変に謙遜しすぎ」
最初に言っておくけれど、私は彼に恋したことはない。
強がりとか妥協とかそんなことじゃなくて、本当に。
けど、私が彼から貰ったものは特別だった。
そんな特別を、黒田くんはいつも大したことないと笑うから、
思い出話と一緒に話してみようと思う。
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私のあの季節は、彼なしでは語れない。
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作者名：むう
| 作成日時：2021年1月16日 20時
