二人の世界

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｢せんせー、いないのー？｣






高校生活最後のホームルームが終わって実験室に行くと、来いって言った張本人はいなかった






いつもの定位置に座って先生を待つ






卒業したらもうここで会うことはないし、菊池先生に会える回数も減っちゃうのかな





早く卒業したかったけど、なんかやっぱり寂しい気がする




…先生、早く来てよ









『…わりい！中島、待った？』









来てって思ってたらタイミングよく現れた菊池先生に頬が緩んだ



…息切らしてる、走ってきたのかな







｢もう、遅いよ先生！


なんでクラス担任じゃないのに遅れるの｣






『色々片付けとかあんだよ…て、なに笑ってんの？』






｢んーん、なんでもないよ｣






『なんだよ』って笑って俺の前、先生の定位置に座った








『…まあ、とりあえず、卒業おめでとう』




｢うん、ありがとう、先生｣








『そんな、おめでたい中島くんに、渡したいものがあるんだけど、もらってくれる？』






｢え！なになに！｣







『…もう今日から先生と生徒じゃなくなるからな』






｢うん、って…なんでそんな寂しいこという…の…




…え…なにこれ…｣









机の上に置かれたのは、鍵









『今まで待たせてごめん




これは俺ん家の合鍵、中島に受け取って欲しい






これからは先生と生徒じゃなくてさ…恋人として、俺に会いに来てよ…って、中島？！』







菊池先生の言葉とプレゼントに涙が止まらない俺に、先生はどうしたものかと同様してる









｢…だって、ずっと不安だったんだもん




信じろって言われたって、俺ばっかり好きなんじゃないかって…あの日、先生に抱きしめられたのも夢だったんじゃないかって…




俺…まだちゃんと先生から"好き"って言ってもらってないし…｣








もしかしたらこの止まらない涙は、これまで我慢してた気持ちなのかも、なんて









『中島』








下向いて泣いてる俺の名前を、先生が呼んだ







｢せんせ…っ｣







先生が、顔を上げた俺にキスをした








『もう先生じゃねえからな





…好きだよ、ずっと前から





愛してる、中島』








『だからもう泣くな』って頭を撫でられ、俺がさらに号泣したのは言うまでもない








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