【ツイステ】異世界から来た盗人 (ページ5)

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俺が声をかけてから、少年は黙ってる。その代わりに、目はめちゃくちゃ泳いでる。多分、この場を凌ぐ方法でも考えているんだろう。
取り敢えず、まず、鞄を返して欲しい。何でお前は俺の鞄を抱き締めてるんだ。
『……少年』
「ｯﾋｬ、はい！」
少年は肩をビクリと震わせ、大袈裟な反応をする。鞄を抱きしめる腕にも力が加わる。
『その鞄、返して欲しいんだが。俺のなんだ』
「ｯぇ、は、あ、ごめん」
そう言って鞄を俺に渡す。『ありがとう』と受け取って少年をチラリと見る。
目が合ってキョトンとした様な顔をしてるが、多分この鞄の中身が気にはなってるんだろう。
『……鞄の中身、気になるか？』
聞いた途端、少年は大きく頷く。その目は早く見せて、という様に期待に溢れていた。
しかし、俺のものを勝手に触ったんだ。多少の罰は与えないとだよな。
『悪いが、これは無闇に他人に見せられるものでは無い。
見たければ暗号を探す事だな。』
理解した途端、少年はガクンと落胆する。
「ｯえぇ〜!!期待させといてそれかよ〜……」
『期待したか。それは悪かったな。でも、人の物をいじる少年もどうかと思うが……』
「そ、それは！……すんませんした……」
『クカカ、よろしい。
まぁでも、少年が俺を助けてくれたんだろう。いずれ、多少の礼はしよう』
「マジで？！よっしゃ！」

「おや、目が覚めましたか？」
ガララとドアが開いて、声の主の方を向く。
入ってきたのは、鴉の仮面を付けた男。帽子に羽に仮面に……舞踏会でも始めるんかコイツは。
「御気分は？」
『あぁ、良くなったよ。多少痛みは感じるが、助けてくれて有難う』
「いえいえ、血塗れの人が居たら助けざるを得ませんよ。なんてったって、私！優しいので！」
そう言って顔を近づけてニコニコする仮面男に苦笑する。
すると、男は一瞬真顔になって俺の耳元に口をちかづける。
「……少し、お話が聞きたいので……体調が良くなり次第、学園長室にお願いしますね」
ニッと微笑んで俺から距離を置く仮面男は、ハートマーク少年に何か話している。学園長室に、って言われても、学園長室って何処だよ。

「では、私達はこれで。私達の他にも生徒や教員は居ますので、何かあれば声を掛けてくださいね」
そう言って仮面男とハートマーク少年は出て行った。
生徒や教員……て事は、ここは学校なのか。
『懐かしいな……昔を思い出す』
途端に俺は睡魔に襲われ、静かに瞼を落とした。