目が覚めたら産屋敷邸だった件。

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御館様side



『自分のことがわからない』



そう言ったこの子は少し焦っているようだった。


その様子からして本当なのだとわかる。


(「弱ったなぁ……｣)

あまね達も驚いている。



もしかしてこの子は記憶喪失なのだろうか。


倒れる前に、何かあったのかもしれない。


せめて何か、自分の名前だけでも……




「それじゃあ、自分の名前はわかるかい？｣



そう言うとキョトンとした顔になった女の子は少し考え、



『……た、たぶ、ん、A…だと、思います。姓は、わかりません。』



Aか…それにしても姓がわからないとなると両親を探すのも難しくなるな…



「では、家族がいたことはわかるかい？自分の、帰る家がわかるかい？｣



もう一度質問をする。



するとその子は


『……両親は、いま、せん。たぶん、。家も、ないです。』



と困ったように言った。




この子も鬼に両親を奪われたのだろうか。家も、帰るところも奪われたのだろうか。


こんなに幼い子は鬼の存在を知っているとだろうか。


少し考え、口を開く。


「君は、鬼の存在を知っているかい？


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驚いた。鬼の事を初めて聞いた人は大抵驚くか泣くか、そんなの信じないという人が多いのに、
この子は動揺しなかった。




ただ、


『…そうですか。』


と寂しいような雰囲気を纏ったように思えた。





ああ。この目が見えれば、彼女の事を見て支えてあげたかったのに。







自分にかかっている呪い。これはどうすることもできない。






少しばかり悔しい思いをしていると、次はこの子が質問した。






『どうして、私をここに置いてくださっているのでしょう。』

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