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お隣さん、七日目。 ページ9

「ちょ、フジ君っ」


「何何、どうした」



安定して1位を取って余裕そうなフジ君に、焦って話しかければ、案の定余裕に満ちた解答が返ってくる。



「操作方法が分かんないの!」


「はぁ!?ちょ、アクセルはここ!アイテムここ!ブレーキここ!」



コントローラーを投げ出してひとつひとつボタンを指さして教えてくれるフジ君。その間にどんどん抜かされてるけど、そんな事は気にしていないようだった。



「……あっ!出来た!ありがとうフジ君!」


「良かった……そういうのはもっと早く言ってよ……さて、ここから逆転しないとね」



物凄い順位が落ちてるのに冷静に対処してるあたりすごいな、と感心する。私なら通信切ったろかってレベルまでキレるのに。



3周目に突入したあたりで、またフジ君が1位に返り咲いた。私はすごい頑張ったけど、4位あたりをずっとうろついているだけ。



それからはほとんど何も無くゴール。
もう一戦やろう、と頼んでみれば。



「俺ももう一戦やりたいと思ってたんだよね。今度は操作方法ちゃんと分かってるね?」



と、笑ってくれた。
操作方法は脳内でもう一度復習し、再戦に臨んだ。



今度は私も調子が良くて、フジ君が1位、私が2位と安定して上位に位置づけている。
これでも私は子供の頃にスーファミやり込んでたからね。最近のはやらないけど。



「あっ、赤甲羅出た」


「え!?嘘、Aちゃんお願い、俺のとこには投げないで」


「どーしよっかなぁ」



少しニヤついてアイテムボタンに手をかけると、『やめてって言ってるでしょっ!』と怒られた。
おかん口調過ぎない?



「でもアイテム交換したいし投げちゃおーっと」


「うっそ!?ふざけんなお前!?」



こんな口悪いフジ君見たことない……
そう思って笑っていると『何笑ってんだよ!』とまたもや怒られた。



3周目に入ったところで、フジ君が楽しげに笑って、私の方をちらりと見た。



「Aちゃん、青甲羅来てる」


「マジ?え、ちょフジ君すぐ後ろおるやん!?
待って待ってあぁぁあ!!」


「へへ、1位頂き〜」


「お前なぁ……!」



結局、フジ君はまた1位、私は2位という何とも気に食わない結果となった。



「Aちゃん、案外上手だね」


「……んな事ないです」


「何、俺に1位取られたから怒ってんの?」



図星なんだけど。
何この人怖い、読心術?
小さく頷けば、フジ君は『当たった〜』と微笑む。
こういうとこ、憎めないんだよなぁ。

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作者名:緋奈香 | 作成日時:2019年8月13日 6時

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