お隣さんが不審者なんですが【fj】 (ページ5)

今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:81,245 hit

お隣さん、三日目。ページ5

「あ」

お隣に藤野さんが越してきてから丁度1週間ほど
経過した今日。
私は盛大にやらかした。そんな盛大じゃないけど。

「……どうしよ、これ」

当たり前だが誰もいない部屋に、私の呟きが小さくこだました。
私の目の前には、鍋いっぱいのカレー。
分量を間違えて、作り過ぎてしまったのだ。

私はあまり食べる方じゃないし、どちらかといえば小食だ。だからこんなにあっても安全に食べられる時期までに食べ切れる気がしない。

私の脳裏に、一つの考えがよぎった。

「……藤野さんにあげよっかな？」

また独り言を呟いたところで、私はブンブンと首を振った。なんであの人なんだ、不審者なのに。
でもお隣さんに分けるのが一番いいかもしれない。
腐らせるよりはマシだ。

今の時刻は午後6時。
今から渡しに行けば、今日中に食べてもらえるかもしれない。

私は一人分のカレーをタッパーに取り分けて、藤野さんの部屋の呼び鈴を鳴らした。
余談だが心臓がバクバクうるさい。
そりゃ不審者の家の呼び鈴押してんだもんな。
緊張より恐怖が打ち勝ってる気がするよ。

「はい、お待ち下さい」

それだけ言われてすぐに切られた。
用件は聞かないタイプなんだな……
それから少ししてドアが開いた。

「お待たせしまし……京極さんっ！？」

「えと、藤野さん……？ですよね……？」

「は、はい……」

目の前の藤野さんは、サングラスもマスクもしていない。でも目鼻立ちが整っていて、感想としては、なんだただのイケメンかって感じ。(？)
でも私の顔を見て驚くのもやめてほしい。

「……あ、あの、用事なんですけど、さっき夕飯作ってたらカレー作り過ぎちゃって。食べ切れなくて腐らせるのもアレなので貰ってくれませんか？」

よく考えたら、彼と会うのは引越し当日挨拶に来た時以来だな。
多分向こうからすればなんだこいつってなってるよ。

でも藤野さんはそんな様子は一切見せず、嬉しそうに笑ってくれた。

「えっ、ありがとうございます！すげぇ美味そう……料理上手なんですね」

「いえ、上手という程では……独り身ですから、料理のひとつくらい出来ないといけないので」

「へっ？あ、そうですかぁ……」

間抜けな声を上げた後、藤野さんは何か思いついたように手を叩いた。

「そしたら、晩御飯俺ん家で食べません？一人だと寂しいでしょ？」

言った後に、彼はやらかしたという顔をしたが、私は完全に乗り気だった。