お隣さんが不審者なんですが【fj】 (ページ4)

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お隣さん、二日目。ページ4

＊Fuji side＊

「……あ、やべぇ、挨拶行ってねぇや……」

大抵の家具や食器などが入ったダンボールに囲まれ、俺は一人で呟いた。
俺の新しい部屋は角部屋で、お隣さんは一人だけ。
さっき荷物を運ぶついでに見たら、表札には『京極』と書いてあった。

俺は手土産を片手に京極さんの部屋の呼び鈴を鳴らした。心臓がバクバク脈打っているのがわかる。
こんなに緊張することでもないのに。

少し経って、『はい、どちら様ですか』という透き通った声が、呼び鈴を通して聞こえた。

「すみません、今日隣に引っ越してきた者です。
引越しのご挨拶に上がりました」

緊張で声が上ずっていないか過剰に気にしながら言うと、『あ、分かりました。お待ち下さい』という返事が来た後、パタパタという足音が聞こえた。
ガチャリとドアが開き、俺は緊張のあまり早口で喋ってしまう。

「初めまして、藤野と申します。今日お隣に引っ越してきました。えっと、あなたは京極さんで合ってますよね？」

目の前の彼女は、俺の顔を見たきりフリーズした。
それのお陰で気付いた。俺、やらかしたな。
サングラスもマスクも外してくるつもりが完全に忘れていた。
絶対不審者だと思われてるよこれ……

「え、あ、はい、京極です。ふ、藤野さんですね。よろしくお願いします……」

ドン引きされてるなこれ。
もうやだよ第一印象最悪じゃん。
この出来事のせいで、その後に何を話したかはよく覚えていなかった。

早口で別れの挨拶をして、慌てて部屋に戻ったところから記憶が復活した。遅せぇよ。

「……あぁ、緊張した……」

ドアに背中を預け、ため息をつくように呟く。
俺の脳内はネガティブな考えで埋め尽くされていたが、その内そんな事考えていてもしょうがないと吹っ切れた。
印象なんて、今のうちならいくらでも挽回できる。そう考える事にした。

ダンボールから荷物を取り出しながら一人で考える。
俺はここに越してきて良かったかもしれない。
未だかつてあんなに魅力的なお隣さんに会ったことなんてない。
可愛い顔してたなぁ……なんて考える俺はどこかおかしいのかもしれない。

ボーッと片付けを進めるうちに、いつの間にか引越しの荷物は全てあるべき場所に収まり、ダンボールは全て空になっていた。

「終わったぁ……」

うーんと伸びをして、小さな机に突っ伏した。
京極さんは、一人暮らしなのだろうか。
下の名前はなんだろう。
知りたい事が増えてしまった。