お隣さんが不審者なんですが【fj】 (ページ30)

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お隣さん、二十七日目。ページ30

何処か妙な会話だけど、彼と話すのはやはり楽しい。
ヒラ君が言うには、フジ君は私に一目惚れしてくれたらしいけど、フジ君が挨拶に来た時、『可愛い』と言われても何も不快に思わなかったのは、私ももしかしたら一目惚れと似たような境遇にあったことを意味するのかもしれない。

それから暫く、ソファに二人で掛けて他愛のない会話をしていると、玄関の方から『ただいまー』と声が聞こえてくる。キヨ達だ。

「あー、マジでくっそ重かった」

キヨが手に持っていたレジ袋をソファ前のテーブルに音を立てて置いた。
そんなキヨにヒラ君とこーちゃんが苦笑しながら、同じように手荷物を置いた。

「お帰り、三人とも。やっぱ手伝うべきだったよね」

「そうだよ、それなのにこーすけが余計なむぐっ」

「全然大丈夫。だってお前らの為のパーティーだし」

キヨがため息混じりに言った言葉は最後まで告げられることは無く。
こーちゃんに口を抑えられ、あえなくキヨは黙ることとなった。
『黙れ。空気くらい読め』とこーちゃんがいつになく低い声で小さく言っていたのを、私の耳は聞いてしまった。

「それじゃあさっさと準備して始めよ～」

ヒラ君が言うと、キヨもこーちゃんも頷く。
私はそれを見て、フジ君に耳打ちした。

「フジ君、私達も手伝おう。申し訳ないし」

「そうだね。そうしよっか」

そこそこの身長差のせいで、背伸びしないと届かなかったけど。

三人がお皿だの飲み物だの何だのを用意し始めたので、私とフジ君も一緒に手伝った。
今度は追い返されることもなかった。

全て準備し終わった。
時計を見てみると、午後6時だった。

「それじゃ、二人の記念日を祝って、まずは乾杯しよう！」

こーちゃんが嬉しそうに言う。
そんなに喜ぶことか、と思っていると、隣に座っていたフジ君に耳打ちされた。

「こーすけってお酒好きなんだ。だからあんな嬉しそうな顔してるんだと思うよ」

「あー…」

なるほどね。
私はお酒弱い方だから、こーちゃんの気持ちがよくわからないけど……

確かにこーちゃんの方を見てみれば、やたらヒラ君やフジ君にお酒を勧めている。
キヨは今意味の無い禁酒をしていると、本人から聞いた。

「Aちゃんも飲むか？」

そう勧められたけど、ここで醜態を晒す訳にはいかないし。

「ううん、大丈夫。ありがと、こーちゃん」

そっか、とこーちゃんはお酒の瓶を置いた。
なんかごめんよ。