お隣さん、二十五日目。 ページ28
*Fuji side*
言った。
言ってしまった。
取り敢えずヒラのせいにしておこう。(?)
『俺は『友達』のままじゃ耐えられない。だから、もしよろしければ、俺とお付き合いして下さい』
そう言って頭を下げた。
すると頭上から、『よろしくお願いします』と、気の所為か普段よりずっと透き通った声が降ってきて。
思わず顔を上げれば、目の前の彼女は頬が少し上気していたものの、素敵な笑顔を見せていた。
それにしても、俺は何でこんな所で言ったんだ?
ここにはキヨもヒラもこーすけもいるのに。
もしかしたら『焦り』もあったのかもしれない。
Aちゃんとキヨ達は初対面なはず。
それなのに旧友のように仲がいい彼らを見ていて、正直嫉妬した。悔しかった。
このままじゃAちゃんを取られるかもって、そう思った。
理由はそれだけじゃないけど、きっとそれも理由のひとつだと思う。
どちらにしろ、ここにあいつらがいる以上はからかわれてもしょうがないか。ごめんAちゃん。
そう覚悟したが。
「フジ、よく言った」
「俺はフジなら言えるって信じてたよ」
「流石は俺らの仲間だな」
三人は口を揃えてそんな事を言った。
Aちゃんに目をやれば、小さく微笑んでくれた。
「……ありがとう、みんな」
俺はなんて良い仲間に恵まれたんだろう。
この世は奇跡の連続なんだと改めて思う。
「何だよ柄にもねぇこと言いやがって」
キヨが俺の背中を強く叩いた。
痛かったけど、そんな事は気にならなかった。
「柄にもねぇってどういう意味だよ」
活字だけ見れば喧嘩にも取れるやりとりだけど、お互いも周りも笑顔だ。
「よーし、それじゃあこれからパーティーでもするか!だって今日はAちゃんとフジの記念日だもんな!」
こーすけが周りを見回して言った。
キヨもヒラも『おーっ!』と天井に拳を突き上げる。
「もう、こーちゃんったら!!記念日とか恥ずかしいこと言わないでよ!」
「別に恥ずかしくはないでしょ」
隣にいたAちゃんに苦笑しながらツッコめば、『私そういうの恥ずかしいの』と返される。
いや、可愛すぎかよ。
比較的計画性のあるヒラとこーすけは、誰が何を買いに行くかとか相談している。
俺も話し合いに加わろうとしたら『主役は黙ってろ』と追い返された。いつからそんな辛辣だよ。
Aちゃんがキヨと何やら話しているけど、今の俺は嫉妬する事にすら気が回らなかった。
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作者名:緋奈香 | 作成日時:2019年8月13日 6時