お隣さん、二十四日目。 ページ26
この四人なら、私の『仲間』になってくれるかもしれない。
そんな希望があった。
確証はない。キヨとヒラ君とこーちゃんに至っては今日初めて会ったのに、ここまで信頼していること自体がおかしいかもしれない。
でも、この人達なら私が今まで会ってきた人の中で一番信頼できるかもしれない。そう思った。
「Aだって変な人だろ？」
キヨが笑いながら聞いてくる。
『どういう意味よ』と返せば、こんな答えが返ってきた。
「だって、変な人達と仲良くなろうとしてるんだから、Aだって十分変な人だよ」
「何その理屈」
「俺の持論」
初耳だわ、と三人にツッコミを入れられるキヨ。
本当に楽しそうで、この人達に混じって笑えたらどんなに楽しいだろうと思った。
「でもさ、俺はAちゃんと仲良くなりたいよ？だって、フジがひとめぼ……あ」
「ラーヒーっ！！」
ヒラ君。そこで止めても遅いです。
そしてフジ君。声、くっそでかいです。
キヨもこーちゃんも、『やらかしたな』という目でヒラ君を見ていた。
「フジ君……」
じっとフジ君を見れば、彼は顔を真っ赤にした。
「……聞いちゃったよね、今の」
「……うん」
「聞かなかったことにして……」
そう言った彼は耳まで真っ赤でゆでダコみたい。
そんなフジ君が可愛く思えてしまって。
「やーだ」
「え？」
「だってもう聞いちゃったもん」
それから、そっぽを向いて半歩だけ踏み出し、
もう一度彼の方を振り返る。
「ねぇ、知ってた？人間ってね、本当に嬉しかった事は、案外記憶に残らないの」
フジ君は勿論、キヨもヒラ君もこーちゃんも、みんなして目を丸くしてこちらを見ている。
「でも嬉しかった事は記憶に留めておきたいでしょ？だから、その……」
「分かった」
食い気味に言ったフジ君の目は真剣そのもの。
言葉に詰まった私を遮るように言った。
「俺が言うから、Aちゃんは黙ってて。
……一目見た時から、ずっと気になってました。
それからずっと頭から離れなくて……」
最後に、極めつけの一言。
「俺は『友達』のままじゃ耐えられない。だから、もしよろしければ、俺とお付き合いして下さい」
そう言って頭を下げるフジ君。
正直、驚いた。天然タラシみたいな彼がこんな正統派の告白をするなんて思わなかった。
でもそれよりも、嬉しさが勝ってしまい。
「……よろしくお願いします」
私は笑顔で頭を下げた。
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作者名：緋奈香 | 作成日時：2019年8月13日 6時
