お隣さん、二十日目。 ページ22
「えっと、私は京極Aです。フジ君の隣の部屋に住んでます。よろしくお願いします……」
消え入りそうな声で言うも、三人ともきちんと聞き取ってくれたらしく、口々に『よろしくね』『よろしくな』『よろしく』と言ってくれた。
そこで話が途切れたので、なんとか話題を作ろうと力を振り絞りまくった。
「あ、あの、ヒラさんとこーすけさんとキヨさんって、ゲーム実況者……ですか?」
この感じは恐らくフジ君と同業だろう。
その予想は当たっていたらしく、三人とも頷いてくれた。
大手のゲーム実況者が揃ってファミレスにいるとか大騒ぎになってもおかしくないが、そこは小説の特権、ご都合主義ということでご勘弁頂こう。
「あ、全然関係ないけど、ヒラで良いよ?さん呼びとか慣れないしよそよそしいじゃん」
「俺も。こーすけとか、後はこーちゃんって呼ばれたりもするから好きなようにどーぞ」
「俺の事はキヨでいいよ。君もさんも付けなくていいから」
初対面なのになんてフレンドリーな人達なんだ。
じゃあそう呼ばせてもらおう。
「えぇと、ヒラ君とこーちゃんとキヨ……で合ってる?」
控えめに聞いてみれば、三人とも微笑んでくれる。
「合ってるよ〜。これからよろしくね」
「やべぇな、俺フジに嫉妬されるかも」
「おう、合ってるぜ」
こーちゃんが、『俺フジに嫉妬されるかも』と言っていたので不思議に思いながらフジ君を見たら、物凄い目でこーちゃんを睨んでいた。何この人怖。
「ふ、フジ君……?」
私が声を掛けると、フジ君はまたすぐにいつもの優しい雰囲気に戻った。さっきのは何だったんだ?
「ん?どうした?」
「今、すごい顔してこーちゃんの事睨んでた……」
「気の所為だよ」
気の所為じゃねぇよとツッコミを入れたかったが、丁度料理が来たので一旦区切られた。
食事をしながらまた会話が始まる。
「Aってすげぇ可愛いけどやっぱモテるよな?」
そう聞いてきたのはキヨ。
目を輝かせているその姿はまさしく子供のよう。
「別に。全然だよ」
嘘つけ、と返されるが、私は本当にモテない。
自分磨きを怠り過ぎたのだろうか。
「えぇ?でも俺惚れちゃいそうなくらい可愛いと思うよっ?」
ヒラ君がニコッと笑う。
天使過ぎない?ねぇ?
だが隣からは負のオーラが。
「フジくーん……?」
「気の所為気の所為」
「やっぱ自覚あんじゃん!」
不毛過ぎないか、このやり取り。
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作者名:緋奈香 | 作成日時:2019年8月13日 6時