ヒロインの仕事を断れないモブ

. ページ21

氷水のように冷たい目線、甲高い笑い声．．．．
　
Aはあの時の光景を思い出していた

「大丈夫ですか？...すいませんこんなこと聞いてしまって．．．」

坂口がAの顔色を察してか心配そうな目で見ている

「．．．大丈夫ですちょっと昔のことを思い出しちゃって．．仕事があるので今日は帰ってもいいですか？」

「．．．そうですね。お食事有難う御座いました」

レジまでAはふらふらと歩いており、坂口はちらちらと腕時計で時刻を確認していた

(帰ったら...桃花の分の仕事もしないとな．．．)

「次のお客様どうぞー」

「私が払いますよ」

財布を探しているのだろうか

坂口がバックをガサゴソとしていた

「いやいや私が払いますよ！！！」

Aもバックの中をごそごそと財布を探していた

(お世話になったから私が払わないと！！！)

「あの．．．お客様..他のお客様が待たれているので...」

店員がAの顔を覗き込むように見ている

「あ..すいません...」

Aと坂口の後ろには孫を連れた白髪混じりのおばあちゃんやスマホをいじっている若い女の人などが並んでいた

(申し訳ない．．．)

「はぁ．．．私が払うので三宅さんは大丈夫ですよ」

「有難う御座います．．．」

．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．

「お昼ご飯有難う御座いました」

Aが坂口に頭を何度もペコペコとしていた

「いえこちらこそ またどこかでお会いしましょう」

(さあ..帰ったら大量の仕事が私を迎えてくれるぞ！！)

Aは坂口とは反対方向の道を軽やかに歩いて行ったのだった

.→←.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す