蝶よ花よと美しく２ (ページ16)

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スマートフォンのディスプレイには

愛してやまない君の名前。

かけてしまったら、もう全部終わりになる。

それがどれだけ哀しいことか、
今はまだわからない。わからないけれど。

いつまでもズルズル引きずるのはもう嫌だ。

７回目のコールが終わりかける頃

単調な音は、ぷつっと切れた。

「……A…？」

『…………あらん、くん』

あぁ、君だ。柔らかくて愛おしい君の声だ。

「…俺は、区切り、ついたよ」

『……もう、？』

「ちゃんと……話さなきゃ」

君は電話の向こうで押し黙った。
けして気まずくはない、沈黙だった。

鼻水をすする音が聞こえて

俺もつられて寂しくなった。会いたくなった。

『…うん、……うん、わかった』

「……今、どこ？」

『…石澤の家。まだ出してもらえないんだ』

「そ、っか。……出てこられそう？」

『なんとか言って、出るよ
……明日、０時にあのホテル、で』

俺がうん、と言いかけているうちに
彼女は電話を切った。

すこし話しただけなのに

２人の物語の結末をしっかり示していて

心にちっちゃな穴が空いた。

嫌だなぁ。君がそばにいないのは。

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