fifty-three ページ13
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「っ！……痛…」
割れるように痛い頭によって目が覚めた。
何も考えられないほどに痛かった。
目の前にあるペットボトルを掴もうとするも
掴む気力すら残っていなくて。
鈍い音をたて床に落下した。
飲まず食わずのまま、何日が経っていたのか
自分でも全くと言っていいほどわからない。
ただ、死んだように眠って、
眠くなくたって布団に潜って寝ていた。
脱水症状を起こした俺の体は
カラカラに乾ききって、中身がなかった。
僅かに残る意識の中、通話履歴の１番上の誰かに電話をかけ、そこでこと切れた。
鳴り止まないインターホンと
ドンドンと叩かれる扉が俺を呼ぶ。
「あーらーんー！！！」
気怠い体を、今ある精一杯の力で起こし
なんとか鍵を開けた。
顔を見る前に俺はつんのめって倒れたけれど。
「うおっ！…え、死んでる？」
「………みゅ、と、くん…」
危うく勝手に死人にされるところだった。
彼は、小さな声を出した俺を
中まで運び、ベットに寝かせてくれた。
「……脱水って、」
彼のもってきてくれた諸々のおかげで
俺は話が出来る程度まで回復した。
呆れ顔の彼にぺこりと頭を下げる。
「…ご迷惑をおかけしました」
「もー、ほんとに何事かと思ったわ！」
「俺もびっくりしたよ…」
美勇人くんは、俺の細くなった腕を掴む。
その顔はもうふざけた美勇人くんじゃない。
「……これじゃ、客の前、出れないでしょ？」
「…うん」
「一応、無断欠勤なんだから、
給料その分ないよー？生活できる？」
「カツカツで頑張るよ、」
美勇人くんは優しい。
けれどその分、厳しくって大人だ。
俺をここまで育て上げたのは彼だし
道を外しそうになっても正してくれたのも。
甘えは許されない世界だからこそ
俺らは一定の距離を保ってきた。はず。
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作者名：ささら | 作成日時：2018年2月23日 20時
