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「…帰ってええんか、」
彼は、俺にそう聞いた。
彼女とよく似たその瞳を俺に向けて
寂しげな顔をするんだ。
「…もう、なにもできない、から」
「……っAのこと、
助けるんとちゃうかったんか…!」
姉思いで、優しい君の言葉は
真っ直ぐ、深く、俺の胸に刺さった。
「…………俺だって……、助けたかったよ…」
今の俺には、助け方がわからない。
俺の顔を見た彼は、すこし驚いた後
すーっと頬に涙を流した。
ぼくらは誰も悪くないのに
何故、こんなにも苦しい思いをするのかな。
前までは、俺が救世主になるつもりだったのに
俺がみんなを救うつもりだったのに
いつの間にこんなに溺れていたんだろう。
「…Aを、っ、助けられへん……」
『……好きになって……っごめんね…』
「…俺らは、こうなる…運命だったんだよ」
なんで、こんなにも、こんなにも。
苦しくて、苦しくて、息をしようとする度に吸い込んだそれにむせて、逃げたくて、逃げたくて、けれどどんなに踠いたって底なし沼はどこまでも深くて、取り残された俺たちの逃げ場は、全て埋まった。
神様、どうか、ご加護を。
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作者名:ささら | 作成日時:2018年2月23日 20時