蝶よ花よと美しく (ページ36)

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わたしの１番古い記憶は、

大好きな母が弟を抱いて微笑む姿だ。

優しくて、穏やかで、けれどしっかり者の母は
わたしの理想像だった。

ずっとわたしを見守ってくれるものだとも
思っていた。なのに。

ある日、突然、母はいなくなった。

それを説明する父は、驚くほど落ち着いていて
子供ながらに違和感を抱いた。

あまりに突然の別れすぎて

涙はこれっぽっちも出なかった。

わたしは学年が上がるにつれ徐々に
父を嫌うようになり

弟とよく接するようになった。

『……やっぱり、おかしいと思わへん？』

「なにが？」

『…父さん、なんであんなに楽しそうにできるん、？』

「……そういう奴やん」

『…母さんのこと、父さんが殺したとしたら？』

「っ、そんなこと…！」

『なくはないんや、って…』

そう疑いをかけるようになったら

火がついたかのように燃えあがり、
２人の勢いは止められなかった。

思っていたよりも探偵はいい働きをし、

ショックなのか、悲しみなのか

よくわからない感情がわたしを襲った。

『アランくん、晴ちゃんと会ったんだってね』

「…………あぁ、弟の？」

『…いい子でしょ？晴ちゃんは、』

そう優しく微笑む彼女は

きっと彼のことが大好きで、忘れられなくて。

とことん、運のない兄弟なのだろうな、と
心の中で微かに感じる。

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