蝶よ花よと美しく (ページ35)

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「……ん、」

『あ、起きた』

意識はあるけど、目が開けられない。

まだ眠っていたいなんていう願いも
あいまって、余計に。

けれど、それを許さなかった彼女は

俺に体をすり寄せ、耳にふーっと息をかけた。

「っ、……ねぇ、ちょっと」

『だめだよ、ノット二度寝！』

「……朝からそのテンションなんなの」

朝が弱い俺には難しい同調。

しょうがなく体を向かい合わせにすると

夜につけたと思われる跡が
彼女の鎖骨にくっきり残っている。

「……すごいな、」

他人事みたいに跡を撫でながらそう言うと
彼女は顔を青ざめさせた。

『え、……もしかして覚えてない、とか』

「……………お酒って怖いなぁ」

『もう、泣きたい』

子供みたいに泣いた振りをする彼女

よしよしと、俺も便乗して慰めるけど
今回ばかりは自分が悪いってわかってる。

彼女は泣いた振りのまま、
俺の胸の中におさまるようにもぞもぞと動く。

『……アランくん、』

「ん？」

『…あらん、』

「…うん」

『……あのね、聞いてほしいんだ。全部。』

全部、全部とは。

俺が知っていることは
きっと彼女の言う全部ではなくて。

ふと、それを知って俺はどうなるのだろうか
と考えてしまった。

嫌いになる？

それとも、余計に好きになるのかな。

俺の頬に君が触れ、

その手に俺が触れる。

やっぱり、もう嫌いになんかなれない。

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