これ以上惑わせないで。[菱田春草] (ページ2)

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季節は夏

なぜかいつもよりも寝苦しく感じ、少し早くに目が覚めてしまった

するとどうだ

目の前には一人の少年がすやすやと眠っている

「な、なにがおこって、、」

普通ならそこで警察に通報するが、わたしはそれをしなかった

なんでって、その少年は見覚えのある顔だったから

黄緑色のふわふわとした長い髪
今では着ることの少ないちゃんとした和装をまとった彼は、めいこいに出てくる「菱田春草」にそっくりだった

「これってまさか、逆トリップ、、？」

でも普通に考えればそんなことはあり得ない

漫画や小説ではありきたりの設定だが、ここは三次元

なにかのドッキリでは？

キョロキョロと辺りを見回すが、カメラらしきものはなにもない

「、、ん、、」

「っ！！」

ごろんと寝返りをうつ少年は、ゆっくりと瞼を開ける

その目と合ってしまい、思わずびくっとしてしまった

少年は見知らぬ場所と女の存在に、がばっと飛び上がり、困惑の表情を浮かべる

「、、、？、、？？」

なにが起こっているのかわからず、言葉を発せないまま、こちらを凝視している

反面わたしはなぜか冷静だった

そうだ、もしこの人が本当にあの菱田春草だとしたら現代のことなんかなにも知らないだろう

わたしがちゃんと話さないと

謎の使命感が生まれ、わたしは菱田春草と思わしき少年に話しかける

一応敬語の方がいいよね、、

「あの、菱田春草、、さんですよね」

「！？なんで俺の名前、、」

春草は驚きと警戒の目をこちらに向ける

やばいやばい、変に誤解されたら困る

「違うんです、怪しいものじゃなくて、、」

わたしは自分が普通の学生だということ、ここは明治ではないこと、そして

春草がこの世界のゲームのキャラクターであることを全て話した

「、、、」

「春草さんは恐らく逆トリップしてきたんじゃないかと、、信じがたいとは思うんですけど、、」

黙ってしまった春草に気まずくなりながらもそう言うと、春草は顔を上げた

「、、なんとなく、わかった」