ミルクティーに角砂糖。【進撃の巨人】

か わ ら ぬ お も い を ページ9

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　「リヴァイー、ペトラから書類は受け取ったー？」

　埃一つない部屋をずんずん歩いて、私の好きな黒を基調としたふかふかのソファーにどかっと座る。
　リヴァイはというと書斎の椅子に座っていて、俯きながら小さく「ああ。」と返した。
　おっと、傷心中かな？


　「にしても兵士やめろなんて言い方はヒドイよ。もうちょっと素直にいこうよ、ね。」

　リヴァイは私の言葉を聞いて、何でその話知ってるんだといった疑問を投げかける事なく、ただ「うるせえ。」と呟いて珈琲を一口飲んだ。

　素直じゃないなぁ。


　「Aちゃん、泣いてたよ。エレンがそれを慰めてた。」

　Aちゃんからしたら王子様はエレンだね。と私が言うと、リヴァイは目を大きく見開いた。
　リヴァイは今、何を思ってる？
　私に何か手伝えることはある？
　Aちゃんには、エレンよりもリヴァイの方がお似合いだと私は思うよ。
　リヴァイはいつから、Aちゃんのどこが好きなの？

　言いたい事はたくさんあった。けど彼はあまり自分の恋愛について多くは語らない。
　聞いても無視されるのは目に見えている。
　だから彼が言った言葉に対して、私は暫く何も言えなかった。


　「……俺はAに幸せになって欲しいと思っていたが、そう思うだけで、エレンはきっとAを幸せにしてやると言えるのだろうな。」


　耳を疑った。……今リヴァイが喋ったよね？

　どうしてだろう。
　自分の事のように、胸が痛い。

　Aちゃんにリヴァイの気持ちが伝わらないのが、苦しい。何で、私が。


　「……おい、何てツラしやがる。」

　「まさか、リヴァイがそんな事言うなんて思ってなかったから驚いたよ。」

　上手くいくといいねと私は言って、リヴァイの部屋を後にした。
　そうだよリヴァイ、何度も言うようだけど、君はとても不器用だから上手く伝わらないんだ。

　それでも、たった一人の女の子に対してここまで優しくなれる男が報われればいいと、私は心から思った。





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　「ごめん、エレンくん。私、行かなきゃ……！」

　「どこに、ですか？」


　兵長の所、Aさんはそう言って、俺の返事も待たずに医務室を出ていった。
　ぱたぱたぱた、と廊下を走る音が遠くなっていく。

　俺はぽす、と近くにあった枕に顔を埋め、Aさんの名前を呼んだ。
　しかし俺の声は、誰にも届くことなく、虚しく溶けて消えただけだった。

　Aさんを抱き締めた両手が、熱い。

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