ミルクティーに角砂糖。【進撃の巨人】

か な し み は ど こ へ ページ3

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　Aさんの涙を見てしまった。
　それは俺にとってかなり大きな出来事だった。
　あの場で書類ですよなんて渡せる雰囲気じゃなかったから、彼女の机に書類を置いて俺は部屋を出た。
　それからリヴァイ兵長に何となく理由を聞いてみたけど、兵長は「さぁな。」と目を合わさずに言っただけだった。

　昼食を済ませ、庭の掃除をする。いつもならAさんが来て、「私こっちやるからエレンくんあっちね！ どっちが早く終わるか競争だー！」なんて笑って然り気無く手伝ってくれる。しかし今日はその姿は無い。

　「エーレンっ」

　「ペトラさん……」

　あれ、Aは？とペトラさんに言われ、躊躇いながらも俺はさっき見た光景を一通り話した。
　すると彼女はそれを聞いてバツの悪そうな顔をした。

　「……Aさんが泣いてる理由、知ってるんですか？」

　恐る恐る聞くと、ちょいちょいと手招きされる。耳を貸してという意味だろう。膝を曲げて少し屈んだ。


　「Aね、何年か前に壁外調査で恋人を亡くしてるの。それでこの間、壁外調査があったでしょ？……その時偶々、見つかったんだ。あの人の……遺体。」

　「じゃあ、俺が見たあのジャケットはその人の……？」

　「そうだね、きっとそうだよ。けどさ、今になって出てくるとは……忘れられないじゃんね、そんなの。」


　そう言って悲しそうに笑うペトラさん。
　確かに、そんなの、酷だ。
　いくら忘れようとしても、逃れようとしても、そのジャケットを見る度にAさんは現実へ引き戻される。
　そんなの、もう勝ち目が無い。俺の出る幕なんて無い。


　「……ペトラさん。俺、Aさんの事好きなんです。」

　え！？と飛び上がるペトラさんをよそに、俺は続ける。

　「Aさんの好きな花とかって、知ってますか……？」


..



　コンコン。
　「失礼します、エレンです。Aさんいますか？」

　「……どうぞ」

　返事が返ってきて、ひとまず安心する。
　部屋の中へ進んでいくとベッドに腰かけたAさんが腫れぼったい瞳をこちらに向けて、どうしたの？と微笑んでいた。

　「あのっ、これ……！」

　背中に隠していた花を差し出す。ラッピングも何もされていない、小さな花。

　「Aさん、元気出して下さい……っ」

　頬が赤くなっていくのを感じる。
　咄嗟に強く閉じた目を開くと、そこには嬉しそうに笑うAさんがいて。
　俺はもうこれだけでじゅうぶんだと思った。

ま ち ぼ う け の あ さ→←ま っ す ぐ み つ め て

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