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「ふぁい」
爪楊枝からまだ暖かいたこ焼きが口に入る。
総悟と間接キスなんて、そんなのもう考えもしなくなった。
こいつだってもう兄弟みたいなもんだ。
「花火は何時にあがるんでィ」
「7時半だったはず」
「んじゃ、それまでにV字ハゲを連れてこりゃいいんだねィ」
「…別に、連れて来なくてもいいよ?」
「俺はお前と2人で花火なんざ見る気ねェんでィ」
「じゃあ誰と見んのよ?」
「…近藤さん」
「見る人居ないんでしょアンタ」
「うるせェ、折角俺が気ィ使ってやってんの分かんねーのか」
少し紅く染まった総悟の頬。
ようやく理解が出来た私はこみ上げる笑いを声を抑えて出す。
「…何笑ってんでィ」
「照れてやんの」
「うるせぇ、金魚すくい行くぞ」
「やった!行く!」
そんな中、一際目立つ人集り。
黄色い歓声が飛び交っていて、思うに芸能人か何かだろう。周りには女性ばかりで私と総悟もそれに押し流された。
「そ、総悟」
「離すなよ」
そう言って私の手を握る総悟。
とにかくその人集りから抜けようと総悟を見ながら歩く。
その瞬間だった。
総悟はハッと目を見開き、小さく舌打ちをした。
それと同時に私の手を握る力が強くなる。
「A、下向け」
「し、下?」
「早く」
「うん…」
暫く歩いていると、ようやく人混みから抜け出せた。
「もういいぜィ」
「…どうしたの?なんか」
そう言って後ろを振り向こうとすると、総悟が声を荒らげた。
「A!!」
そうすると、周りの人は皆こちらを向いて、総悟は少しため息をつく。
「さっさとしろィ…」
「ご、ごめん」
総悟は私から手を離し、私の前を歩いた。
携帯がブーっとなり、巾着から取り出す。
「(公式LIMEかよ…)」
スマホを巾着に治そうとすると、少し前に買ったストラップが消えていた。
土方さんとのお揃いで使う予定だった物だ。
「総悟、私落し物しちゃった…多分、さっきの所だからここら辺で待ってて。直ぐに取ってくるから」
行こうとすると、総悟はがしっと私の手を掴む。
「俺が取ってきてやらァ、だからお前がここにいろィ」
「いいよ、私が…」
「いいっつってんだろィ…此処にいろ」
「…訳わかんない、なんで行っちゃダメなの?」
「黙って聞いときゃいいんでィ、ここにいろ」
「嫌だ、アンタ機嫌悪いし…
もういいよ、別行動で。じゃあね」
「っ、おい!A!!」
総悟の呼ぶ声に振り返らず、私は落し物を取りに来た道を戻った。
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唐辛子の民(プロフ) - な、な、なんと...全て読んでくださるなど天使ですか、神ですか?あ、仏ですか。了解しました。応援ありがとございますゥゥゥゥ!!頑張りやすゥゥゥゥ!!! (2018年8月21日 3時) (レス) id: 7066b21a8f (このIDを非表示/違反報告)
こくろん(プロフ) - 初めて唐辛子の民さんの作品を読みました!もう面白くって作品全て読んじゃいましたw応援してます!頑張ってください! (2018年8月20日 17時) (レス) id: 0640f47a0f (このIDを非表示/違反報告)
唐辛子の民(プロフ) - カラ松ガールさん» 愛してます。ありがとうございます。嫉妬系大好きでございます。リクエストありがとうございます!では、早速作成してきます! (2018年8月16日 23時) (レス) id: 7066b21a8f (このIDを非表示/違反報告)
カラ松ガール - 過激ですかね。。。すいません。 (2018年8月16日 23時) (レス) id: 146ccfef01 (このIDを非表示/違反報告)
カラ松ガール - 土方さんが夢主の部屋に入った時、夢主が床どんされてる状況を見て嫉妬してしまう土方さんがみたいです! (2018年8月16日 23時) (レス) id: 146ccfef01 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:唐辛子の民 | 作成日時:2018年8月12日 23時