兄弟の絆。 (ページ10)

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side裕太

裕「涼太、おいで」

改めてここで暮らす一員として、みんなと同じような部屋を与えてもらった。

今までは仮入所的な感じだったけど、これからは本格的にここでの生活が始まる。

本来は1人一部屋らしいけど、涼太はまだ小さいから俺と一緒。

慣れない環境に戸惑っているのか、部屋の中をウロウロ。

涼「ゆーた、くっ、」

裕「ん？どしたん？」

涼「…んっ、こわっ…」

裕「んー？怖くないで。大丈夫」

涼「ぱちん、て、」

裕「誰もパチンしやんよ」

母親からの痛み。

恐怖。

植え付けられた負の感情は、二度と消えない。

まだ、こんなに小さいのに。

裕「ほら、おいで。ギュッてしながら寝よ？」

涼「ん、」

腕を広げながら、もう一度、涼太を呼ぶ。

するとトコトコ、ゆっくり近寄ってきて腕の中に収まる。

裕「何も怖くないで。ここはもう大丈夫」

涼太をベッドの中で抱きしめながら、優しく背中をさする。

裕「メンさんも亜嵐くんも。怖ないやろ？」

いつの間にか涙が溢れていた涼太。

優しく指で拭ってやった。

裕「んっ…」

カーテンから差し込む眩しい光で目を覚ます。

腕の中には相変わらず小さな温もりがある。

裕「もう朝か、」

今日は土曜日だから、学校はない。

一日中、涼太と一緒におれる。

昨日、施設の中のみんなに、俺と涼太が紹介された。

今日からは朝ごはんもみんなと一緒にリビングで食べることになる。

どんな感じなんやろ。

俺と涼太のこと、どんな目で見るんやろ。

物珍しそうに見られるのも、嫌そうな顔で見られるのも、ある程度は慣れてきてるから大丈夫なはず。

裕「涼太、朝やで。起きれるか？」

まだ眠っている涼太。

優しく声をかけながら起こす。

涼「んんっ…」

裕「涼太、おはよ」

まだ眠いのか目を擦りながらも、俺に腕を伸ばしてくる。

その腕を取って抱き上げ、布団の上でパパッと着替えさせた。

裕「ほな、行こか」