兄弟の絆。 (ページ2)

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side裕太

涼「…んっ…」

裕「涼太、おはよ。おいで、ほら！」

涼「んんっ、あっ…」

裕「んー？おはよ」

ちょうど、1年くらい前。

俺が14歳、涼太が4歳の時やった。

涼太に "障害" があることがわかったのは。

喋らない涼太。

歩く時はなぜか体が傾いて、上手く歩けなかった。

指先も器用になんて動かせなかった。

頻繁に痙攣も起こしてた。

それに伴って、時折、顔面も麻痺して震えてしまうことがあった。

"気持ち悪い"

父ちゃんの口から、そんな言葉が出た時。

耳を疑った。

まさか、父ちゃんがそんなこと言うはずない。

でも気づけば父ちゃんは、うちに帰ってくることはなくなってた。

離婚が成立したって、母さんから聞いた。

そして、また俺は耳を疑った。

"裕太、行くよ"

そう言って、片手にキャリーバックやボストンバッグを持った母さんに腕を引かれた。

パチリ、目の前に座っていた涼太と目が合う。

"涼太は？どこ行くん？"

その後の言葉、俺はきっと二度と忘れへん。

"障害なんて知らない"

"あんな子、お金と時間の無駄"

"障害のある子なんて育てられない"

"私の子どもじゃない"

何かを察したのか、静かに涙を流しながらこちらを見つめる涼太。

あぁ、涼太を捨てる気なんだ。

そう気付いた俺は、母さんの腕を振り払って。

まだ4歳の。

1人で歩くこともできなくて。

喋ることすらできない。

小さな、たった1人の弟を抱きしめた。

わかってた。

14歳の俺には、何もできんことくらい。

それでも、離したくない。

たった1人の弟やから。

痙攣起こすし、顔面も麻痺する。

知ってた、近所や幼稚園の友達や親、先生から。

涼太が "気持ち悪い" そう言われてることくらい。

でも俺は、そんなこと一度も思ったことはなかった。

俺を見れば、精一杯笑ってくれた。

俺が落ち込んでたら、そっと寄ってきて、ピタッとくっついて寄り添ってくれた。

不器用ながらに、上手く動かせないながらにも、俺のタオルを一生懸命畳んでくれた。

そんな涼太が可愛くて、愛おしくて。

涼太を手放したくない。

俺は涼太と一緒にいる。

気づけば俺は、施設に入れられてた。

それでも、嬉しかった。

涼太と一緒にいられるから。