Angel of Death (ページ16)

今日:24 hit、昨日:4 hit、合計:64,549 hit

１４ページ16

⁻

葛葉が生まれたのは100年以上前、日本とは別の国で、葛葉は大きな産声を上げた。

吸血鬼は魔族の中でも位が高いため、他のみんなと同じように遊んだりはできなかった。いつも一人、屋敷に仕える使用人と過ごしていた。二人兄はいたものの、兄も学業で忙しい年齢だったのだ。

長寿な吸血鬼と言えど、幼少期は誰しも同じ。屋敷の中での生活に嫌気が差した幼い葛葉は、屋敷を抜け出し、知らない道をずんずんと進んでいった。

「…ここどこ…？」

まだ満足に羽を扱えなかった年齢。そして見たこともない場所。変える手段もなく、不安になるには十分すぎる条件だった。

日はどんどん暗くなり、まだ幼い葛葉にとって、辺りが暗闇に包まれることで、まるで世界に一人だけ取り残されたような気持ちになっていた。

心に限界が訪れ、ぽろり、涙が頬を伝ったとき、ふと目の前に誰かの足が見えた。

「…なんだ、迷子か」

顔を上げると、高身長の男。

赤い髪にゆらりと揺れる尻尾。黒いサングラスのせいで瞳は見えなかった。

「面倒臭いな、服も良さそうなの着てるし、どっかの坊ちゃんか？」

「坊ちゃんじゃない」

「は？」

「ラグーザ、アレクサンドル・ラグーザ」

「…夏翠」

幼い葛葉と、既に何年も死神として生きてきた夏翠の出会いだった。

⁻