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「夏翠!」
「お、葛葉」
それから数年、葛葉も幼児から少年になった。人間でいう、中学生くらいだろうか。
相変わらずいつもの場所で落ち合っている二人だが、葛葉はどうしても気になることがあった。
「死神ってどうやってなんの?」
「あれ、知らないっけ」
「知らない。俺は吸血鬼だけど、生まれたときからそうだったから。死神もそうなん?」
「いや、死神は元からじゃない。…俺はもともと人間だからな」
人間、本でしか読んだことのない、別の世界の生き物。葛葉は目を輝かせ、ずい、と夏翠に近寄った。近い、と押しのけられたが。
「死神って何してるか知ってるか?」
「魂を取るんじゃないの?」
「半分あってる。死にそうな人間に1か月取り憑いて、死を見届ける。たまに死亡日を超えて生きてしまうこともあるから、その時はその場で魂を取るけど。そうして、死んでから残った魂を天界に持っていく仕事」
「へぇ、1か月も見てなきゃいけないんだ。面倒だね」
「ま、俺はもう位高いからそんなに仕事はないけど。…死神っていうのはな、自分から命を絶った人間がなるんだ。もっとこうしたい、そんな想いがこの世に体を残してんだよ」
「…だから、死なないの?もう死んでるから」
「そういうこと。お前初めて出会ったとき、俺はもう死神になって200年くらいだな」
「俺より生きてる」
「…死を見届けるのは楽な仕事じゃない。病気、事故、…自ら絶つ者もいる。だから、いつか、全人類が平等に人生を全うできる、幸せな世界を作ることが俺の夢」
「じゃあ、俺もその夢手伝う!」
「お前みたいなへなちょこ吸血鬼にできるわけないだろ」
「できるよ、俺はアレクサンドル・ラグーザだからな!」
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作者名:ヨッコラセ | 作成日時:2022年9月19日 20時