2 ページ4
-
「でさー、なんか知り合いのホストクラブに入ってきた新人が極度の女性恐怖症らしくって。そんなんでホストできんの?って思うよねー、俺よりも2つ上らしいけど‥あーちゃん聞いてんの」
「え?ああ」
「聞いてなかったろ」
「聞いてたよ」
「はぁ?‥まぁ、いいや。で、これどこに向かってんの」
「不動産屋」
「は?」
「不動産屋」
不動産屋はわかってたって、と納得のいかない顔をするこいつは置いといて、俺はさっさと足を進める。
俺は横浜の港町在住。でもこいつは新宿歌舞伎町在住。別に30分もあれば来れる距離ではあるが、こいつは俺を気遣ってか俺の家に泊まり込み自分の家にほとんど帰っていない。
しかも、俺の家だって狭いアパートだから2人で暮らすには狭すぎる。
「こーた、お前仕事場近い方がいいよな」
「え、ま、まぁ‥」
「なら新宿のどっかだな」
「いや、ん?」
不動産屋に向かう少しの道、こいつはずっと不思議そうな顔をしていた。
別に今更だろ、今までほぼ毎日俺の家に転がり込んできて、こいつの服も、下着も、歯ブラシも、箸も、気付いたら家にあって、俺が仕事に行ってる間にこいつは新宿まで行って仕事して俺が寝てる間にわざわざ戻ってきて。
‥自分の家、要らねぇじゃん。
「‥一緒に暮らそうや、ってこと」
別に、プロポーズなんかじゃない。ルームシェアとか、同居とか、そんな風に考えればいいだけの話。
だから別に、こんなに緊張する必要はない。
-
116人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ヨッコラセ | 作成日時:2018年9月7日 23時